
漢方
漢方
さまざまな生薬の組み合わせによって、その人の体質に適したからだの症状に対応できる漢方薬は、何千年もの歴史があり、治療効果のあるものが今日も医薬品として用いられています。漢方の基本は、“人間の体も自然の一部”、“病気ではなく病人をみる”、という考え方です。体の一部分だけにスポットをあてるのではなく、体全体の状態のバランスを総合的に見直すといった特徴があります。また、体質や生活習慣などから見直し、整えていきます。なお、漢方は、病名がついていない不調(未病※)にもアプローチできます。
※人の健康状態は、ここまでは健康、ここからは病気と明確に区分できるわけではなく、健康と病気の間を変化しています。「未病」とは発病には至らないものの軽い症状がある状態をいいます。
漢方医学 |
西洋医学 |
哲学的(漢方理論) |
科学的(近代医学理論) |
経験的 |
理論的 |
総合的(全人的) |
分析的(専門診療科の分化) |
人間的(全身的) |
局所的(臓器別) |
天然品、複合成分 |
合成品、単一成分 |
マイルドで副作用も少ない |
効果は大きい分、副作用も多い。時に重篤な副作用もある。 |
・体本来のもつはたらきを高めるように作用して、体自身の力で正常な状態に戻すことを重視しています。
・局所的に現れた症状だけを見るのではなく、病気の人全体を見て、心身全体のひずみを治していくという総合治療を重視しています。
・自覚症状を重視しています。そのため、具合が悪く病院で検査をしたが、数値は悪くないといった症例にも対応できます。
・症状として起きている現象に対して、局所的に対応する。
・病気を部分的に見ることで、本来体がするべきはたらきを薬が代わりにし、そのはたらきが切れると元の状態に戻ってしまうこともあります。
・病気を診る場合、客観性が重視されるため、自覚症状だけでなく、他覚症状や検査数値が重視されます。
近年漢方の作用機序は少しずつ解明され、科学的なデータが報告されています。西洋薬による医療に限界を感じるとき、漢方薬を使用する医師が多いです。また、特に複数の症状があり、西洋薬で複数の薬剤が必要なとき、漢方がパフォーマンスを発揮するときが多いです。漢方薬、西洋薬、どちらが優れているというわけではないので、それぞれの得意分野を組み合わせるかたちで併用することが有効だと考えられています。
当院では漢方薬と西洋薬を処方することにより患者様に寄り添った医療を提供いたします。漢方薬も保険診療での処方が可能ですので、お困りの方はぜひ当院にご相談ください。
1.自覚症状が辛いと感じても、「異常なし」「気のせいだ」「原因不明」「治療の必要がない」と言われた場合
2.慢性的な体調不良や症状を根本的な改善を目指したい。
3.病名は診断されたが、有効な治療法や西洋薬がない
4.心身ともに様々な症状があり、西洋医学ではいくつかの異なる薬剤が必要な場合
5.西洋薬が効果を示さない時、漢方薬の出番です。
6.西洋薬は効果的ですが、副作用がきつい場合。
7.使用している西洋薬がすでに多い場合
上記の場合は、漢方薬が効く可能性はあります。これらの状況においても諦めず、漢方薬を積極的に検討してみてください。私は様々な臨床現場で西洋薬の限界を感じ、また各種勉強会で漢方薬の魅力をしっており、西洋薬が効かない30%の困っている人たちにこそ、漢方をおすすめしたいと思っています。
主症状 | 随伴症状 | 漢方 | |
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心窩部痛あり 心窩部痛症候群(EPS) |
芍薬を含むため筋攣急による疝痛を伴う | 柴胡桂枝湯 | |
芍薬は含まれず、過酸症状をともなう心窩部鈍痛 | 安中散 | ||
その他の処方 ①四逆散:芍薬を含む.柴胡桂枝湯の無効例に試みる. ②大柴胡湯:体格が頑丈で,上腹部の緊張が強く,便秘傾向である. ③芍薬甘草湯:腹部疝痛に頓服で用いる. |
|||
心窩部痛なし 食後上腹部愁訴症候群(PDS) |
食欲低下、胃もたれ、疲れやすい、かぜを引きやすい、体力がない、冷える、下痢しやすいなど | 六君子湯 | |
比較的体力あり、心窩部の張り、嘔気や腹鳴、軟便下痢,口内炎などをともなうこともある | 半夏瀉心湯 | ||
その他の処方 ①補中益気湯:FD症状もあるが,訴えの中心が全身倦怠感である. ②人参湯:慢性下痢や手足の冷え,色が薄くて頻回の排尿などをともなう. ③安中散:胸やけ,心窩部鈍痛を訴える. |
参照:消化器疾患と漢方治療
PPIが無効例や効果が乏しいときに漢方薬が選択肢の1つになる.
1)半夏瀉心湯
2)六君子湯
3)安中散:心窩部鈍痛とともに逆流症状がある.
4) 茯苓飲合半夏厚朴湯:心窩部がガスで張り,胸部つかえ感や抑うつ気分をともなう.
主症状 | 随伴症状 | 漢方 |
消化不良や吐き気 |
・腹部のつかえ、少量の食事で満腹になる ・普段から胃腸が弱く、胃もたれの第一選択薬 |
六君子湯 |
・みぞおちのつかえや胸やけがある方に ・暴飲暴食により、腹部膨満感、軟便、下痢など |
半夏瀉心湯 | |
・イライラや不安、不眠、ストレスのある方に ・わき腹からみぞおちにかけて苦しく、口苦を伴う方 |
小柴胡湯 | |
・吐き気・嘔吐の第一選択薬 | 五苓散 | |
そのほか |
・のどの異物感や胸の不快感のある方に第一選択薬 |
半夏厚朴湯 |
体力 | 特徴 | 漢方 |
体力あり |
胃腸が丈夫で、体力が中等度の慢性の便秘の方。 | No84.大黄甘草湯※ |
月経異常、下腹部の張り、のぼせ、冷えを伴う肥満型の女性。 | No61.桃核承気湯※ | |
体力中等 | 腹部膨満感、腹痛、しぶり腹などの症状を伴う方。 | No134.桂枝加芍薬大黄湯※ |
体力低下 |
腹部の術後のイレウス防止、腹部膨満、鼓腸、ガス疝痛など | No100.大建中湯 |
子供の便秘、下痢の症状がある方。また動悸、神経過敏を抑える。 | No99.小建中湯 | |
体力低下、コロコロ便 |
高齢者や体力の衰えで、排便する力の弱い方。 | No126.麻子仁丸※ |
高齢者の弛緩性便秘、けいれん性便秘の症状がある方。 | No51. 潤腸湯※ | |
その他 | 便秘による肛門痛・出血・かゆみ、便が固い、痔などの症状 | No3.乙字湯 |
★『建中』には中(消化管機能)を建て直すという意味があるので胃腸機能を改善するることが期待できる。
※大黄を含む
急性下痢 | 水様性下痢、暑気あたり、二日酔い、尿量減少 | No17. 五苓散 |
水様性下痢、暴飲暴食、冷たい飲食物の摂りすぎ、未消化便、口渇 | No115.胃苓湯 | |
ストレス性 | 胃腸虚弱、過敏性腸症候群、腹痛、腹満 | No60.桂枝加芍薬湯 |
神経性胃炎にも過敏性腸症候群にも効果あり | No14.夏瀉心湯 | |
ストレス・過緊張に伴う下痢、腹満、腹鳴 | No35.四逆散 | |
慢性下痢 | 疲労倦怠感、食欲不振、慢性下痢 | No41.補中益気湯 |
冷え、冷えると下痢、疲れると下痢、胃痛、腹痛 | No32.人参湯 | |
冷え、倦怠感、慢性下痢、フワフワした感じのめまい、むくみ | No30.真武湯 |
子供または高齢者で体力がない、胃腸虚弱、腹痛 | No99.小建中湯 |
冷え症、手足の冷え、冷えて下腹部痛、月経痛 | No38.当帰四逆加呉茱萸生姜湯 |
急激な痛みに、頓服で | No68.芍薬甘草湯 |
補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯はどれも体力虚弱な方に適し、疲労倦怠感に効能効果があります。気を補う漢方薬で、疲労倦怠感などによく使用されます。効果が似ている理由としては、5つの生薬が重複しているためです。
「四君子湯」気を補う | 「四物湯」血を補う | その他 | |||||||||||
人参 | 白朮 | 茯苓 | 甘草 | 当帰 | 川芎 | 芍薬 | 地黄 | 黄耆 | 桂皮 | 陳皮 | |||
十全大補湯 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 柴胡・升麻 | ||
人参養栄湯 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 五味子・遠志 | ||
補中益気湯 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 生姜、大棗 |
※十全大補湯=「四君子湯」+「四物湯」+(黄耆、桂皮)
※人参養栄湯=(十全大補湯-川芎)+(五味子・陳皮・遠志)
※五味子、陳皮、遠志、それぞれ主に「肺」「脾」「心」にはたらきます。
五味子(ゴミシ):汗や鼻水や痰、そして咳が出るのを抑える効果があります。
陳皮(チンピ):去痰・鎮咳作用もあります。
遠志(オンジ):去痰作用があり、さらに精神の安定作用があるので、不眠や動悸に用いられます。
※「補中益気湯」
人参・黄耆などの気を補う生薬に、黄耆・柴胡・升麻の気を上へ持ち上げる昇提薬が入っている。
※気虚→元気がない、疲れやすい、食欲がない、など
※血虚→顔色が悪い、皮膚や髪にツヤがない、目がかすむ、立ちくらみ、ふらつき、忘れっぽい、眠りの質が悪い、など
いずれも体力虚弱、疲労倦怠感にききますが
補中益気湯は、胃腸の働きを高めることに加え、気(スマホの充電)を増やす・持ち上げ・巡らせる効果があるので、元気を補うことで疲れを改善します。幅広い年齢層に長引く風邪やコロナ後遺症にも使われます。
十全大補湯は、消化器症状はなく、顔色が悪い、貧血気味、冷えや皮膚乾燥を伴う方に使われています。
人参養栄湯は、精神が不安定、呼吸器症状あり、認知機能低下などを伴い、より高齢やフレイルの方に使われています。
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