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不眠症とは
不眠症とは、良質な夜間の睡眠を十分に取ることができず、仕事や学業に支障をきたすなど日中の機能障害が生じた状態を指します。すなわち不眠症=不眠症状+日中の機能障害。不眠症状には寝付きが悪い(入眠困難)、夜間に目覚めてその後眠れない(睡眠維持困難)、朝早くに目覚めてしまう(早朝覚醒)などのタイプがあります。
不眠症の原因
生理的な要因
生活習慣(夜勤)や睡眠時の環境(周囲の騒音、明るさ、暑さや寒さ、枕やふとんなど)
心理的な要因
不安や心配事が気になって眠れない、楽しいイベントの前に気が高ぶりなど。
薬理学的な要因
カフェイン、たばこ、ステロイド薬やインターフェロン、パーキンソン病の薬など。
身体的な要因
痛みやかゆみ、せき・息苦しさ、頻尿など。
精神医学的な要因
神経症やうつ病、統合失調症など。
簡易的な認知行動療法
1.睡眠時間を6時間に設定。起床時刻を決め、逆算して就寝時間を決定
・6時起床であれば就寝は24時
・睡眠日誌を必ず活用すること
2.上記の時間以外は寝床に入らない
・寝床に入るのは眠くなってから
・眠れず20分経過したら一度寝床から出る
3.就寝前は光を避ける。起床時は光を浴びる
・就寝前はダウンライトなどで部屋の明かりを控えめに
・起床後はカーテンを開け、全身で光を浴びる
4.就 寝 4時間前からカフェイン、アルコールは禁止。就寝前の煙草も
5.夕食前後の軽い運動、その後はぬるめのお湯で入浴
・ハードな運動や42℃以上の熱い湯船は逆に寝つきが悪くなるので注意
6.日中はなるべく活動的に、昼夜のメリハリをつける。昼寝は禁止
薬物治療
1, ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
作用時間 | ベンゾジアゼピン系 | 非ベンゾジアゼピン系 | |
超短時間型 |
6時間以内。入眠障害に |
ハルシオン |
アモバン |
短時間型 | 12時間以内 | レンドルミン(ブロチ) リスミー(リルマザホン) |
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中間型薬 | 24時間以内 | ユーロジン(エスタゾラム) ベンザリン、ネルボン(ニトラゼパム) ロヒプノール(フルニトラゼパム) |
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長時間型 | 30時間以上 | ドラール(クアゼパム) |
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の臨床での使い分けと処方のポイント
入眠障害(寝つきの悪さ):マイスリー
理由:作用発現が早く、半減期が短いため、寝つきを改善しつつ翌朝への持ち越し効果が少ない
入眠障害+軽度の中途覚醒:アモバン
理由:マイスリーよりやや作用時間が長く、中途覚醒にも一定の効果が期待できる
入眠障害+中途覚醒:ルネスタ
理由:3剤の中で最も作用時間が長く、中途覚醒にも効果を発揮する
2, メラトニン受容体作動薬
代表薬:ベルソムラ(一般名:スボレキサント)、デエビゴ(一般名:レンボレキサント)。
作用機序:覚醒を促すオレキシンの働きを抑制することで、自然な睡眠を促進
特徴:依存性が低く、自然な睡眠構造を維持しやすい
3, オレキシン受容体拮抗薬
代表薬:ロゼレム(一般名:ラメルテオン)
作用機序:体内時計を調整するメラトニン受容体に作用し、睡眠・覚醒リズムを整える
特徴:依存性がなく、副作用が少ない
4, 抗うつ薬・精神安定剤
トラゾドン、クエチアピン、リスパダールなど
5, 漢方
■酸棗仁湯(103):不眠症や精神不安に効果的、心を落ち着けて入眠を助けます。
■加味逍遙散(24): ストレスや不安による不眠に効果的で、心を落ち着ける作用も期待できる。
■柴胡加竜骨牡蛎湯(12): イライラや不安を和らげ、リラックスを促進します。特にストレスが原因の不眠に有効。
■桂枝加竜骨牡蛎湯(26): 驚きやすく、ビクビクしやすい方に、心を落ち着ける効果も期待できる。
■帰脾湯(65): 疲れやすく、睡眠の質が悪い不眠に、体力を回復させる効果も期待できる。
■抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏 (83):神経の高ぶりからくる不眠に有効。
■加味帰脾湯 (137):不安や気分落ち込みによる不眠に有効。
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