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気管支喘息は気管支に慢性の炎症により、気管支が発作的に狭くなったり、「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」といったり息が苦しくなる発作がみられる病気。この発作は自然に改善することもありますが、多くは治療が必要です。重症の発作では死に至ることもあります。また喘息は完全に治すことは難しいと考えられていますが、治療により発作を起こしにくくし、健康な人とほぼ同じ生活を送ることができます。
症状
ゼイゼイする、咳が出る、息が苦しいなどの症状が発作時に出現します。これらの症状は夜間や早朝に多いのが特徴です。発作は安静にしていれば自然におさまることもありますが、どんどん進行し、会話することも困難な状態になることがあります。
悪化の原因
アレルゲンの暴露、呼吸器感染症、激しい運動、天候、アルコール、薬、ストレスなど。
診断
1. 発作性の呼吸困難、喘鳴、咳の反復
2. 可逆性の気流制限 (無症状期をはさんで、発作が反復)
3. 症状が他の心肺疾患によらない
4. 気道過敏性の亢進
5. アトピー素因 (血清特異的IgE抗体)
6. 気道炎症の存在
1、2、3が臨床診断上重要である。4、5、6は他の所見とともに喘息診断を支持する。
上記のような症状を繰り返し、心臓病など他の疾病が否定された場合に喘息と診断します。診断に一番重要な情報は症状と経過です。いつ症状が始まったのか、どんな咳や痰がでるのか、喘鳴の有無や程度などに注意して下さい。また肺機能検査、血液検査、胸部X線検査、呼気NO検査、喀痰検査が診断に役立ちます。
治療
喘息の治療には大きく分けて、発作による症状を緩和する治療(急性期治療)と、発作を起こしにくくする治療(長期管理治療)の2つがあります。発作の程度や回数からどのような治療を行うか決定します。
発作時の治療(急性期治療)
息苦しさをとることが目標です。短期作用型β2刺激薬(SABA)の吸入、ステロイドの全身投与(点滴もしくは内服)、アミノフィリン点滴などを用います。大発作・重篤な発作時は、上記に加えて酸素投与、エピネフリン投与、必要に応じた気管挿管、人工呼吸療法も併用します。もし、ご自宅や会社・外出先などで喘息発作が出現した際、呼吸が苦しくて横になれないなど症状が改善しない場合は、すぐ受診してください。
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治療法・治療薬 |
適応 |
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酸素吸入 |
酸素が足りなければ、酸素吸入を行います。 |
短時間作用型β2刺激薬(吸入)※ベネトリン、メプチンなど |
発作で狭くなった気管支を広げるために行います。効果が速く、発作時には第一選択となる治療です。20~30分間隔で繰り返し吸入する場合があります。 |
副腎皮質ステロイド薬(点滴、内服)※点滴:ソル・メドロール注、ソル・コーテフ注 ※内服:プレドニゾロン |
気管支拡張剤で十分な効果が得られない場合に、副腎皮質ステロイドの全身投与(点滴、内服)を行います。 内服と点滴で効果に大きな差はありません。効果発現には2~4時間かかります。 1週間以内の短期間で使用する場合は副作用に関してほとんど心配する必要はありません。 |
長期管理(非発作時の治療)
治療ステップに応じて段階的に薬物療法を行っていきます。吸入ステロイド薬が基本となり、抗ロイコトリエン受容体拮抗薬を内服、長時間作用型β2刺激薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、抗IL-5抗体薬、抗IL-5Ra抗体薬、気管支熱形成術などの治療を行います。
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治療薬 |
適応 |
|---|---|
①吸入ステロイド薬(ICS)※吸入:フルタイド®、パルミコート®、キュバール® |
最も効果的な抗炎症薬である。副作用は、口腔・咽頭カンジダ症、嗄声などで全身性の副作用は少ない。妊娠自体に影響しない。吸入後はうがいが必要です。 |
②長時間作用性β2刺激薬(LABA)※吸入薬:セレベント; ※貼付薬:ホクナリン |
吸入薬、貼付薬、経口薬があり、必ずICSと併用する(単独使用は禁忌)。ICSにLABAを併用すると相乗効果が得られる。 |
③吸入ステロイド薬・長時間作用型β2刺激配合薬(ICS・LABA)※アドエア、シムビコート、フルティフォーム、レルベア、スピリーバ・レスピマット |
気道の炎症を抑え、気管支を拡張することで、喘息による咳や息苦しさなどを改善します。ICSとLABAを個別に吸入するよりも有効性が高い。 |
④ロイコトリエン受容体拮抗薬※シングレア(モンテルカスト)やオノン(プランルカスト) |
吸入ステロイド薬でコントロール不十分な場合、追加薬として使用します。 |
⑤テオフィリン徐放製剤※テオドール、テオロング、ユニフィルLA |
昔から使われてきた薬ですが、現在は吸入ステロイド薬でコントロールが不十分な場合、追加薬として用いられています。 |
⑥生物学的製剤※ゾレア、ヌーカラ、ファセンラ、デュピクセント、テゼスパイア |
高用量ICSと複数の気管支拡張薬の併用下でもコントロール不十分で総血清IgE値が30~700 IU/mL、通年性吸入抗原が証明されている場合に投与する。重症喘息や難治性喘息の患者様に使われています。 |




