
肝機能異常は、有症状で受診した際の急性肝障害の場合と無症状で健診や人間ドックなどで初めて異常値を指摘された場合に分けると考えます。
有症状で受診した際の急性肝障害の場合
ウイルス感染(肝炎ウイルスやEBウイルスなど)、薬物性肝障害(漢方薬や健康食品も含む)、胆管結石などによる胆管閉塞を原因とする肝障害などが考えられます。
健診や人間ドックなどで初めて異常値を指摘された場合
- ASTよりALT値の上昇が目立つ場合→非アルコール性脂肪性肝疾患が最も多い
- γ-GTだけの上昇→お酒の可能性が高い
- γ-GTとALPが共に上昇→胆汁のうっ滞を疑う。例えば、総胆管結石、胆管がん、膵頭部がん、薬剤性肝障害、肝内占拠性病変(肝細胞がんや肝膿瘍)あるいは肝内胆管結石などの疾患が考えられます。また、治療中の悪性腫瘍の肝転移でも、両酵素の上昇が見られます。
- ALPだけの上昇→ALPアイソザイムで原因を探る。ALPは一般にALP1~ALP6の6種類に分類されます 。
ALP1:肝臓由来(肝・胆道の閉塞や悪性腫瘍で増加)
ALP2:肝性(肝・胆道疾患で上昇)
ALP3:骨性(骨生成や成長期、骨疾患で上昇)
ALP4:胎盤性(妊娠時に出現)
ALP5:小腸性(脂肪食後や肝硬変で上昇)
ALP6:免疫グロブリン結合型(特異な免疫結合ALP)
健常成人ではALP2が、小児ではALP3が主体であることが多いです・ALP3↑→骨疾患や悪性腫瘍の骨転移を疑う
・ALP1、ALP2↑→薬剤性肝障害を疑う
・ALP4↑→妊娠
・ALP5↑→血液型にも左右される - 高ビリルビン血症のみ→体質的な問題が多い。
- 肝炎ウイルスマーカーのみが陽性な場合→HBVやHCVなどを調べる。
健診時肝機能障害を指摘されたら、ぜひ当院に一度ご相談してください。慢性肝障害では線維化マーカー、FIB4やエコーにより肝線維化の程度を評価する。線維化が進行するに伴い肝癌のリスクが高まるのでリスクに応じた肝癌のサーベイランスが重要となります。
1)肝疾患の拾い上げのための検査
① 肝細胞障害( AST、ALT、AST/ALT):ウイルス肝炎(急・慢性)、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎、うっ血肝など
② 胆汁うっ滞(ALP、γ -GT、総ビリルビン):肝内胆汁うっ滞(薬物性、原発性胆汁性胆管炎など)、 閉塞性黄疸
③ 過剰習慣飲酒(MCV、γ -GT)
④ 体質性黄疸の(総ビリルビン、直接ビリルビン)
⑤ AST、ALTの上昇がない肝炎ウイルスキャリア:HBs抗原、HCV抗体
2)病因の検索のための検査
| 肝細胞障害の要因 | 診断に必要な血液検査項目 |
|---|---|
| A 型肝炎ウイルス | HAV IgM 型 HA 抗体 |
| B 型肝炎ウイルス | HBV HBs 抗原、IgM 型 HBc 抗体、HBV—DNA |
| C 型肝炎ウイルス | HCV HCV 抗体、HCV—RNA |
| E 型肝炎ウイルス | HEV IgA 型 HEV 抗体、HEV—RNA |
| EB ウイルス | EBV IgM 型 VCA 抗体 |
| サイトメガロウイルス | CMV IgM 型 CMV 抗体、IgG 型 CMV 抗体のペア血清 |
| 単純ヘルペスウイルス HSV | IgM 型 HSV 抗体 |
|
薬物性肝障害 |
IgE、好酸球数、薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST) |
|
アルコール性肝障害 |
AST>ALT、尿酸、γGT、MCV |
|
自己免疫性肝炎AIH |
抗核抗体、、抗平滑筋抗体、IgG |
|
原発性胆汁性胆管炎PBC |
抗ミトコンドリア抗体、抗ミトコンドリア M2 抗体、IgM |
| 原発性硬化性胆管炎PSC | 特異的な血液検査はない、陰性所見と画像で診断 |
| 甲状腺疾患 | TSH、FT3、FT4 |
| 循環不全 | BNP |
3)重症度・進展度評価のための検査
- 急性肝障害の重症度:プロトロンビン時間
- 血小板、線維化マーカー(IV型コラーゲン、ヒアルロン酸、M2BPGi)、 FIB-4インデックスなど
- Child-Pugh 分類による肝硬変の重症度判定




