
肝硬変とは
何らかの原因(B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、脂肪肝、自己免疫肝炎など)で肝臓の細胞が徐々に破壊され、壊れた部分を補うように繊維組織が増えてしまい、肝臓が硬くなった状態。は慢性肝疾患の終末像である。
原因
2017年までの結果では、HCV 48.2%、アルコール性 19.9%、HBV 11.5%がトップ3でしたが、C型肝炎の治療の進歩により、HCVからの肝硬変が著明に減少し、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)からのものが上昇しています。
2023年6月の日本肝臓学会の最新報告では、アルコール性 28.8%>HCV 27.1%>NASH 12.7%>HBV 10.9%>原因不明 7.2%>胆汁うっ滞性 6.4%>自己免疫性 4.5%>うっ血性 1.0%となっています。NAFLDの内、約15%の人がNASH、NASHの内、3~4割が肝硬変になるといわれています。今後、NASHが肝硬変原因のトップとなることが想定されます。
症状
代償期:身体症状がない
非代償期:全身倦怠感,易疲労感,消化器症状,黄疸,脳症,腹水,浮腫,吐血,掻痒感など。診察では、手掌紅斑,くも状血管腫,女性化乳房,眼球結膜黄染,腹水などなどが見られる,
診断
- 一般検査:アルブミン⇩、PT活性⇩、ビリルビン⇧、血小板⇩、アンモニア⇧がみら、血球が減少します(赤血球⇩、白血球⇩、血小板⇩)。FIB4 indexが参考にすることがあります。
- 肝線維化マーカー:ヒアルロン酸やⅣ型コラーゲン7S、M2BPGiなどがあり、単一の検査である程度の進行程度を判断出来ます。
- 画像検査:超音波(正常肝では辺縁がスムーズで肝内部が均一であるのに対し、肝硬変では辺縁がゴツゴツしていて肝内部が粗雑)やCT検査など
診断後のフォロー検査
1~2 ヵ月毎:T-Bil,PT,AST,ALT,γGT,アルブミン,総コレステロール,血小板数
3~6ヵ月毎:腫瘍マーカー(AFPとPIVKA II) 、超音波
1~2 年: 上部消化管内視鏡、 CT 検査
治療
予後肝硬変そのものに対する根本的な治療薬はない。禁酒や塩分を控えたバランスのよい食生活を送ることは進行・悪化の予防に重要である。生活習慣や食生活の工夫をすることと、急激な全身状態悪化への対症療法(症状を和らげる治療)が中心となります。
合併症の確認とその治療
・肝臓がん:肝機能に応じて手術、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術、化学療法など
・食道静脈瘤:食道の静脈が蛇行して破れやすくなる状態、出血の危険がある場合には内視鏡治療を行うこともある
・腹水:塩分制限、利尿薬内服、アルブミン製剤静注、腹水穿刺など
・肝性脳症:原因となる脱水や感染の治療、分岐鎖アミノ酸製剤、ラクツロースなどによる便秘の解消
・低栄養状態:適切な栄養バランスの食事、分岐鎖アミノ酸製剤など
・腹水や黄疸が一般的な治療によって改善しない場合には、肝移植手術が行われることもある。お腹にたまった腹水を抜き出して、治療に使うことがある(CARTと呼ばれる)
予後
10 年で約 50%、特に非代償性肝硬変では 5 年で約 25%と予後不良です。死因の約60%は肝がん、20%は肝不全、20%は門脈圧亢進症による食道・胃静脈瘤破裂による出血死によるものです。
当院ではかかりつけの方に対し、肝硬変のリスクを評価し、肝硬変の予防に力を入れています。肝硬変に進行してしまう場合は肝がんのリスクが高くなります。当院はガイドラインの指針に従い、早期肝がんの発見を目指して、定期的に血液検査、エコー検査、肝がんの腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-Ⅱ、AFP-L3分画)をフォローいたします。




