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動脈硬化と脈硬化性疾患
動脈硬化とは、動脈の内膜にコレステロールや脂質が蓄積し、プラーク(粥状動脈硬化巣)が形成される状態を指します。このプラークが血管を狭くし、血流を妨げることで、さまざまな疾患を引き起こします。動脈硬化性疾患は、動脈の内壁に脂質やコレステロールが蓄積し、血管が硬化・狭窄することによって引き起こされる病気で、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞や末梢動脈疾患などの重篤な疾患を含みます。
危険因子
診断
上の血圧と下の血圧の差は「脈圧」と呼ばれ、一般的に40〜60mmHgが望ましいといわれています。脈圧は「大動脈」の動脈硬化の程度を反映する指標であるといわれ、大きい場合にも小さい場合にも動脈硬化のリスクがあります。形態学と血管機能の検査はより正確な指標です。
①形態学的な検査
頸動脈エコー、下肢動脈エコー、冠動脈CT、頭部MRA、心臓カテテール検査などが含まれています。頸動脈エコーの結果を見るとき、IMT、プラーク、狭窄度が評価のポイントです。
項目 | IMT(内膜中膜厚) | プラーク(粥状硬化板) | 狭窄・狭窄部最大流速 |
---|---|---|---|
定義・基準 |
最大IMTが約1.1mm以下は正常。 |
最大IMT≥1.1mm |
プラークの増大に伴い、動脈が狭窄した状態 |
成因 | びまん性肥厚、動脈硬化の初期変化 | 局所隆起、動脈硬化は進行 |
脳血管短軸断面でのプラーク占有率が50%以上の場合,ドプラ血流法にて狭窄部最大流速を計測する。 |
臨床的意義 | 値が大きいほど将来の心血管病リスク増加 | IMTより強力にイベント予測 | 脳梗塞を生じる危険性が高くなってくる |
対応 | 生活習慣改善・危険因子管理 | 厳格な危険因子管理は必須。 | 高度狭窄なら外科治療(内膜剥離術等)検討も |
IMTの臨床的意義
・経年的増厚はイベント増加と関連していると考えられるが、個人に対する治療効果の判定には用いるべきではない.
・ 薬物治療や生活習慣の改善によりIMC肥厚の進展を抑制できる.
プラークの臨床的意義
・ 臨床的意義から考慮して,プラーク性状を評価する対象は,「最大厚が1.5mmを超えるプラーク」とする.
・ 評価内容 a)部位 b)サイズ c)表面の形態 d)内部の性状 e)可動性など.
・ 注意すべきプラーク 1)可動性プラーク 2)低輝度プラーク 3)潰瘍形成を認めるプラークなど.
②血管機能検査(生理検査)
動脈の硬さと詰まり(CAVI心臓足首血管指数)
数値 | 判定 | 意味 |
---|---|---|
8.0未満 |
正常範囲 |
柔らかでしなやかな血管 |
8.0~9.0 | 境界域 | |
9.0以上 | 動脈硬化の疑いあり |
動脈硬化を起こした血管 |
治療
動脈硬化性疾患の予防には、健康的な食生活、定期的な運動、禁煙、適切な体重管理が重要です。治療には、薬物療法や生活習慣の改善が含まれ、重症の場合は手術が必要になることもあります。
①生活習慣の改善
-
- ○禁煙し、受動喫煙を回避する
- ○過食と身体活動不足に注意し、適正な体重を維持する
- ○肉の脂身、動物脂、鶏卵、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える
- ○魚、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆製品、未精製穀類の摂取量を増やす
- ○糖質含有量の少ない果物を適度に摂取する
- ○アルコールの過剰摂取を控える
- ○中等度以上の有酸素運動を、毎日合計30分以上を目標に実施する
②基礎疾患の治療とリスク区分別の厳格の脂質管理目標の達成
治療方針 | 管理区分 | 脂質管理目標値(mg/dL) | |||
LDL-C | Non-HDL-C | TG | HDL-C | ||
一次予防 | 低リスク | <160 | <190 | <150 | ≧40 |
中リスク | <140 | <170 | |||
高リスク | <120 | <150 | |||
二次予防 | 冠動脈疾患の既往 | <100 (<70) |
<130 (<100) |
※リスク評価は動脈硬化性疾患予防ガイドライン・エッセンス をご参照してください。
③LDLの数値もコレステロールのLH比も重視すべき
LDLコレステロール値が正常であってもHDLコレステロール値が低いと動脈硬化性疾患のリスクが高まると報告されているため、悪玉と善玉のバランスを示す指標LH比(LDL/HDL)は、動脈硬化のリスクを評価する指標として注目されています。
LH比 |
意義 |
---|---|
1.5未満 |
プラークがさらに小さくなる可能性が高まる |
1.5~2.0 | プラークが小さくなる可能性が高まる |
2.0~2.5 | 動脈硬化のリスクやプラークが大きくなる可能性が高まる |
2.5以上 | 心筋梗塞のリスクが急増する |
動脈硬化性疾患は進行するまで自覚症状がないことが多いため、定期的な健康診断が重要です。早期発見と適切な対策が、重篤な病気を防ぐ鍵となります。