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気血水の判断
東洋医学では、人のカラダを構成する基本的な要素は気・血・水だと考えています。
気はエネルギー、血はカラダの中を流れる血液、水はカラダの中を流れる血以外の液体をさしています。どれかの成分が不足したり、停滞したりして、この3つの要素のバランスが崩れるとカラダに不調が起きます。気と血は体を温める性質があり、水は体の熱を冷ます性質があります。
気の異常:気虚、気鬱、気逆
「気」は「エネルギー」「元気」みたいな物を指します。気の異常には①気の量が十分に足りない状態の「気虚(ききょ)」、②気が体内をうまくめぐっていない状態の「気鬱(きうつ)」、③気が逆流して上半身に集まっている状態の「気逆(きぎゃく)」の3種類があります。
●「気虚」
「エネルギーが足りない」「元気が出せない」状態
・全身倦怠感
・疲れやすい
・食欲がない
・日中眠い
代表的な生薬:人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、大棗(だいそう)など
代表的な漢方:
◎補中益気湯
◎四君子湯
●「気鬱・気滞」
本来、体を巡っている「気」どこかで滞っている状態
・頭→抑うつ 気分が塞ぐ 頭が重い
・喉→のどのつかえ感。何かがのどにへばりついている感覚
・胸→息苦しい
・胃→げっぷ
・腹→ガス貯留、腹部膨満
・手足→腫れていて痺れる
代表的な生薬:厚朴(こうぼく)、紫蘇葉(そよう)、香附子(こうぶし)、半夏(ハンゲ)など
代表的な漢方:
◎半夏厚朴湯
◎香蘇散
◎茯苓飲合半夏厚朴湯
●「気逆」
気の巡りには方向があり、本来の流れ(体の中心から末端へ、上半身から下半身へ)が逆流した状態。
| 上衝症状 |
頭痛、めまい 動悸、胸部不快感 のぼせ、顔面紅潮、ひえのぼせ |
| 消化器症状 |
吐気、嘔吐 ゲップ、逆流感 みぞおち部の突き上げ感 |
| 呼吸器症状 |
激しい咳 呼吸困難感 喘鳴 |
代表的な生薬:桂皮(けいひ)、紫蘇葉(そよう)、呉茱萸湯(ごしゅゆ)、黄蓮(おうれん)、半夏(ハンゲ)、厚朴
代表的な漢方:
◎苓桂朮甘湯:めまい、動悸、神経症状を伴う気逆に適応
◎苓桂甘棗湯:不眠、精神不安を伴う場合に選択
◎桂枝加竜骨牡蛎湯:虚弱体質で下腹部に腹直筋緊張を認める症例
血の異常:瘀血、血虚
「血」は、いわゆる「血液」と考えても良いのですが血液そのものより、血液の働きも含めたもっと広い意味も指すようです。血の異常には、①血の量が十分に足りない状態の「血虚(けっきょ)」、②血が体をうまくめぐっていない状態の「瘀血(おけつ)」の2種類があります。
●瘀血:血の巡りが悪い
・唇や歯茎や舌が赤紫や黒っぽい
・毛細血管が浮き出ている
・目の下にクマがある
・皮下出血(青あざ)
・舌の裏側の血管がどす黒く浮き出ている。
・おへその2本指分斜め下の圧痛(臍傍圧痛)
◎イライラ
◎不安
◎生理痛が強い
◎手足の冷え
◎肩こり
◎皮膚のツヤがなくなる、
◎ニキビ
◎クマ
◎シミ
◎そばかすができやすい
瘀血の原因:運動不足、過食、肉食、ストレスなど
瘀血を改善する代表的な生薬:牡丹皮(ボタンピ)、桃仁(トウニン)、芍薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)
代表的な漢方:
◎桃核承気湯: 便秘、のぼせ、不眠、不安、興奮などの症状に用いられる。
◎桂枝茯苓丸: 月経不順、更年期障害、婦人科疾患、皮膚疾患、循環器疾患、ストレス性疾患などに広く応用される。
◎通導散: 便通の改善や不安、いらだちなどの精神神経症状に用いられる。
◎当帰芍薬散→血の巡りを良くして、体を温めます。
◎加味逍遙散→気を下に降ろして、熱を冷まします。自律神経も整えます。
◎桂枝茯苓丸料加薏苡仁→血の巡りを良くし、肌のターンオーバーを活性化させます。
●血虚
代表的な症状:
皮膚が乾燥したり、抜け毛、爪が割れやすい、こむら返りなんかの症状が起こります。
集中力がない、ぼーっとする 眠れないなんかの精神症状もあります。
代表的な生薬:当帰、川芎、芍薬、地黄
代表的な漢方:
◎四物湯: 血を補う生薬から構成され、体力虚弱で冷え症の体質に適しています。
◎当帰芍薬散: 冷え性や貧血の方に用いられ、頭重やめまい、耳鳴りのほか、肩こりや頭痛などの不調にも使われます。
◎当帰飲子: 血と気を補う生薬が含まれ、冷え性や皮膚の乾燥、湿疹や皮膚炎などの乾燥肌に用いられます。
◎七物降下湯: 血と気の巡りを整えることで寒熱のバランスを改善し、のぼせや血圧上昇を抑えます。
◎十全大補湯→気と血の両方を補います。気を補う「四君子湯」と血を補う「四物湯」が配合された漢方薬です。
◎人参養栄湯→体力と気を補います。
「水」の異常:「水毒・水滞」「津虚」
水の異常には、①水が体をうまくめぐっていない状態「水毒(すいどく)」と②体内の津液(潤い)が不足している状態「津虚」の2種類があります。津液は、血液以外の体液で、皮膚や粘膜、内臓を潤し、からだを冷やす働きがあります。
●「水毒、水滞」
代表的な症状:
・むくみ
・腫れ
・胸に水が溜まる(胸水)
・腹に水が溜まる(腹水)
・関節液が溜まる
・胃の流れが悪く飲んだ水が降りて行かずチャプチャプする。
・めまい、耳鳴り、立ちくらみ(実はこれも水毒が絡んでいることが多いと言われてます。)
・気候や天気で悪化する頭痛(これも水毒の治療薬が効いたりします。)
代表的な生薬:「沢瀉」「茯苓」「朮」「猪苓」
代表的な漢方:
◎五苓散:頭痛や下痢に
◎猪苓湯:排尿痛や下痢に
◎真武湯:冷えや倦怠感、むくみなどに
◎越婢加朮湯:関節痛や水疱湿疹に
◎防已黄耆湯:膝の関節痛に
●「津虚」
津虚(しんきょ)は、体内の正常な水液(津液)が不足した状態を指します。津虚の原因としては、過労、睡眠不足、加齢、乾燥した環境、ストレスなどが挙げられます。治療法としては、滋陰剤や利水剤を使用することが推奨されます。
代表的な症状:
・喉・口の乾き
・肌・唇・鼻の乾燥
・便秘・尿量の減少
・目の乾き・疲れ
・乾いた咳・声のかすれ
・ほてり・寝汗・微熱
・食欲不振・胃の不快感
・関節のポキポキ音・動きづらさ
代表的な生薬:麦門冬(ばくもんどう)、天門冬(てんもんどう)、地黄(じおう)、人参(にんじん)、五味子(ごみし)など
代表的な漢方:
◎麦門冬湯(ばくもんどうとう)
◎滋陰降火湯(じいんこうかとう)
◎六味地黄丸(ろくみじおうがん)
参考WEB ページ
- 生薬一覧(あいうえお順)
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