
肝機能異常は、有症状で受診した際の急性肝障害の場合と無症状で健診や人間ドックなどで初めて異常値を指摘された場合に分けると考えます。
有症状で受診した際の急性肝障害の場合
ウイルス感染(肝炎ウイルスおよび肝炎ウイルス以外の各種ウイルス)、薬物性肝障害(漢方薬や健康食品によるものも含む)、胆管結石などによる胆管閉塞を原因とする肝障害などが考えられます。
健診や人間ドックなどで初めて異常値を指摘された場合
1)トランスアミナーゼ値の上昇が目立つ場合(非アルコール性脂肪性肝疾患が最も多い);2) γ -GTの上昇が目立つ場合;3) γ -GTとALPが共に上昇している場合(胆道系酵素の上昇);4)高ビリルビン血症のみ;5)肝炎ウイルスマーカーのみが陽性などに分けて考えます。慢性肝障害では線維化マーカー、エラストグラフィーにより肝線維化の程度を評価する。線維化が進行するに伴い肝癌のリスクが高まるのでリスクに応じた肝癌のサーベイランスが重要となります。
健診時肝機能障害を指摘されたら、ぜひ当院に一度ご相談してください。
1)肝疾患の拾い上げのための検査
① 肝細胞障害(逸脱酵素)のスクリーニング: AST、ALTおよび両者の比(AST/ALT)
・ウイルス肝炎(急性/慢性)、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎、うっ血肝など
② 胆汁うっ滞のスクリーニング: ALP、γγ -GT、総ビリルビン
・肝内胆汁うっ滞(薬物性、原発性胆汁性胆管炎など)、 閉塞性黄疸
③ 過剰習慣飲酒のスクリーニング: MCV、γ -GT、糖鎖欠損トランスフェリン(CDT)
④ 体質性黄疸(主としてGilbert症候群)のスクリーニング
・総ビリルビン、抱合型ビリルビンの割合
⑤ トランスアミナーゼの上昇がない肝炎ウイルスキャリアのスクリーニング:
HBs抗原、HCV抗体
2)病因の検索のための検査
| 肝細胞障害の要因 | 診断に必要な血液検査項目 |
|---|---|
| A 型肝炎ウイルス | HAV IgM 型 HA 抗体 |
| B 型肝炎ウイルス | HBV HBs 抗原、IgM 型 HBc 抗体、HBV—DNA |
| C 型肝炎ウイルス | HCV HCV 抗体、HCV—RNA |
| E 型肝炎ウイルス | HEV IgA 型 HEV 抗体、HEV—RNA |
| EB ウイルス | EBV IgM 型 VCA 抗体 |
| サイトメガロウイルス | CMV IgM 型 CMV 抗体、IgG 型 CMV 抗体のペア血清 |
| 単純ヘルペスウイルス HSV | IgM 型 HSV 抗体 |
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薬物性肝障害 |
IgE、好酸球数、薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST) |
|
アルコール性肝障害 |
AST>ALT、尿酸、γGT、MCV |
|
自己免疫性肝炎AIH |
抗核抗体、、抗平滑筋抗体、IgG |
|
原発性胆汁性胆管炎PBC |
抗ミトコンドリア抗体、抗ミトコンドリア M2 抗体、IgM |
| 原発性硬化性胆管炎PSC | 特異的な血液検査はない、陰性所見と画像で診断 |
| 甲状腺疾患 | TSH、FT3、FT4 |
| 循環不全 | BNP |
3)重症度・進展度評価のための検査
① 急性肝障害の重症度→プロトロンビン時間
② 血小板、線維化マーカー(IV型コラーゲン、ヒアルロン酸、M2BPGi、オートタキシン)、 FIB-4インデックスなど
③Child-Pugh 分類による肝硬変の重症度判定




