α受容体とβ受容体の基本知識
α受容体もβ受容体も交感神経系において重要な役割を果たしています。α受容体は主に血管平滑筋に分布し、その活性化は血管収縮や血圧上昇などを引き起こします。β受容体は主に心臓、肺、血管に分布し、その活性化は心拍数の増加、心筋収縮力の増強、気管支拡張、血管拡張などを引き起こします。α受容体は2つのサブタイプ、β受容体は3つのサブタイプに分類されます。
α受容体の分類
α1受容体 | α2受容体 | |
---|---|---|
分布 | 血管平滑筋、尿道括約筋 |
交感神経終末、膵臓β細胞 |
機能 | 血管収縮、尿閉 | ノルアドレナリン放出抑制、インスリン分泌抑制 |
β受容体の分類
β1受容体 | β2受容体 | β3受容体 | |
---|---|---|---|
分布 | 心臓 |
気管支平滑筋、血管平滑筋 |
脂肪組織 |
機能 | 心拍数増加、心筋収縮力増強 | 気管支拡張、血管拡張 | 脂肪分解促進 |
α受容体とβ受容体の生理意義
役割 | α受容体 | β受容体 |
---|---|---|
ストレス反応 | 急性ストレス時の血圧維持 |
エネルギー動員と心拍出量↑ |
エネルギー代謝 | インスリン分泌抑制を介しエネルギー貯蔵↑ | 脂肪分解や熱産生を介しエネルギー消費↑ |
循環器系 | 血圧維持と血流分配の調節 | 運動時の心拍出量↑と骨格筋血流↑ |
呼吸系 | 気管支は広げ、酸素供給↑ |
α受容体遮断薬とβ受容体遮断薬
メインテート(ビソプロロール)もアーチスト(カルベジロール)も高血圧や心不全の治療に用いるβ遮断薬です。違いをまとめてみました。
メインテート |
アーチスト |
||
---|---|---|---|
受容体 |
β1遮断:β2遮断=75:1 | α遮断+β遮断 | |
標的 |
心臓以外への作用が少ない | 心臓以外に気管支にも血管平滑筋にも作用 | |
剤型 |
0.625、2.5、5mg 錠 | 1.25、2.5、10、20mg錠 | |
適応 |
表1に参照 | ||
患者像 |
喘息やCOPD | 使いやすい | 使いにくい |
頻脈 | 使いやすい | 使いにくい | |
低血圧 | 使いやすい | 使いにくい | |
高血圧 | 使いやすい | 使いやすい | |
徐脈 | 使いにくい | 使いやすい |
表1 メインテートとアーチストの比較
メインテート | アーチスト | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
0.625 | 2.5 | 5 | 1.25 | 2.5 | 10 | 20 | |
本態性高血圧症 | - | 〇 | 〇 | - | - | 〇 | 〇 |
腎実質性高血圧症 | - | - | - | - | - | 〇 | 〇 |
狭心症 | - | 〇 | 〇 | - | - | 〇 | 〇 |
心室性期外収縮 | - | 〇 | 〇 | - | - | - | - |
慢性心不全 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | - |
頻脈性心房細動 | - | 〇 | 〇 | - | 〇 | 〇 | 〇 |
〇:効能あり -:効能なし |