
心不全とは
心不全とは、“心臓の機能が低下することによって、心臓が全身の各臓器に血液を十分に送り出せない状態”です。日本循環器学会の定義では、“心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気”とされています。
心不全分類
心臓機能のうちどの働きがどの程度低下しているのか、その低下が急激におこったのか、徐々に起こったのかによって、さまざまに分類されます。 心不全は、臨床的に左心不全と右心不全、収縮期心不全と拡張期心不全、急性心不全と慢性心不全などに分類されます。 治療上の立場から、急性心不全と慢性心不全の分類法が一番有用です。
心不全の症状
- 血液を送り出す能力が低下→乏尿、四肢冷感、めまい、だるさ、血圧低下など
- 肺に血液がうっ滞する→息苦しさ(労作時呼吸困難、発作性夜間呼吸困難、起座呼吸など)
- 体の各部分にうっ滞→むくみ(下腿浮腫、顔面浮腫、肝腫大、腹水など)
心不全のステージ
心不全の病期ステージはステージAからステージDまでの4つに分けられます。治療方法はステージによって異なります。一人ひとりの症状とステージに合わせた薬物療法を行うことで、進行を防ぐことができます。
ステージA:
心不全リスクは高いが、心疾患は併発していない状態。
ACE阻害薬などの薬物療法を行う。
ステージB:
心疾患は併発しているが、無症候の状態。
ACE阻害薬やβ遮断薬などの薬物療法を行う。また、症例に応じては血行再建を行う。
ステージC:
心不全症候が出現している状態。
集学的治療が望まれる段階。
薬物療法ではACE阻害薬、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬、利尿薬などを服用。
症例に応じて不整脈治療、心臓再同期療法、弁膜症カテーテル治療、外科的治療を行う。
ステージD:
難治性心不全。集学的治療が望まれる段階。
薬物療法ではACE阻害薬、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬、利尿薬などを服用。
症例に応じて不整脈治療、心臓再同期療法、弁膜症カテーテル治療、外科的治療を行う。
心不全の治療
心不全の治療方法は、急性心不全と慢性心不全では異なります。
急性心不全での治療目標は、
①諸症状を緩和する
②臓器のうっ血状態を改善する
③救命を図り、容態を安定させる
重症な場合が入院可能な病院へ迅速に搬送する必要があります。
慢性心不全での治療目標は、
①安静時の自覚症状を軽減すること
②運動耐容能を改善させ、運動時の自覚症状を軽減すること
③長期生命予後を改善すること
多くはクリニックの外来通院が必要です。
原因治療:
・急性心筋梗塞:カテーテル治療(バルーン拡張やステント留置)やバイパス手術(閉塞箇所を迂回する血行路を作る治療)
・弁膜症:弁置換術(弁の取り換え)や弁形成術(弁の修復)など
・不整脈:アブレーションなど。
対症療法:
心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら経過する病気であり、上手に付き合っていく必要があります。ポイントとしては、
①心不全の悪化の原因を避ける
②心不全の悪化のサインに早く気づく
③食事療法・内服を必ず継続し、自己管理を徹底する
①心不全の悪化の原因
・薬の飲み忘れ
・塩分のとりすぎ
・過労・運動不足
・感染(かぜ・肺炎)
・喫煙・お酒の飲み過ぎ
・我慢して受診しないなど
②心不全の悪化のサイン
・むくみが増した
・尿の量やトイレに行く回数が減った
・息苦しさが増した
・いつもより脈が速い、ひどい動悸がする
・咳や痰がよくでる
・数日で2kg以上体重が増加した
・食欲がなくなってきた
③自己管理の徹底
・ 薬を飲み忘れない
・ 塩分を控える
・ 適度な運動
・ 禁煙・節酒
・ 感染予防
・ 心不全悪化の症状を認めたらすぐかかりつけ医と相談する




