骨粗鬆症|神戸市兵庫区|湊川ファミリークリニック|湊川駅徒歩5分の内科・糖尿病内科・消化器内科

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骨粗鬆症

骨粗鬆症|神戸市兵庫区|湊川ファミリークリニック|湊川駅徒歩5分の内科・糖尿病内科・消化器内科

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折のリスクが増大した状態です。

骨強度=骨量約 70%)+骨質約 30%)

骨量、いわゆる単位面積あたりの骨密度です。健康な骨は骨密度が高くて丈夫です。骨粗鬆症の骨は骨密度が低くて、すかすかになっている。

・骨質は、骨の微細構造、骨代謝回転、微細損傷の集積及び骨組織の石灰化等の複数の要素からなっています。

骨粗鬆症を疑うポイント

脆弱性骨折(外傷がはっきりしない骨折)
② 健診・検診などでの低骨密度値
高齢者の腰背部痛
④ 身長低下25歳頃に最大身長に比して4cm以上の低下)
⑤ 女性では月経(閉経時期・早期閉経か)、妊娠・出産や授乳歴
⑥ 危険因子(高齢、BMI低値、喫煙やアルコールの過剰摂取)の有無
食事内容(偏食、食物アレルギーの有無)
運動習慣の頻度と程度
低骨密度(骨量)や続発性骨粗鬆症を来し得る疾患や治療

骨粗鬆症の分類

骨粗鬆症は原因によって「原発性」と「続発性」に分けられます。

「原発性」は主に閉経や加齢などは原因です。一方、「続発性」は骨密度を低下させる他の疾患や薬剤などは原因です。

続発性骨粗鬆症」の原因
内分泌性:副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、クッシング症候群

栄養性: 炎症性大腸疾患による吸収不良症候群、胃切除後、神経性食欲不振症、ビタミンAまたはD欠乏、ビタミンC欠乏症

薬物性:ステロイド薬、性ホルモン低下療法治療薬、SSRI、ワルファリン、メトトレキサート、ヘパリン

長期間の不動:臥床安静、対麻痺、廃用症候群、宇宙旅行

疾患性:糖尿病、関節リウマチ、慢性腎臓病、肝疾患、アルコール依存症、慢性閉塞性肺疾患

骨粗鬆症の診断

 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012 年度改訂版)

低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず,骨評価の結果が下記の条件を満たす場合,原発性骨粗鬆症と診断する。

I.脆弱性骨折(注1)あり
   1.椎体骨折(注2)または大腿骨近位部骨折あり
   2.その他の脆弱性骨折(注3)があり,骨密度が YAM の 80%未満
II.脆弱性骨折注1)なし
   骨密度が YAM の 70%以下または-2.5SD 以下

YAM:若年成人平均値(腰椎では 20~44歳,大腿骨近位部では20~29歳)
注 1  軽微な外力によって発生した非外傷性骨折。軽微な外力とは,立った姿勢からの転倒か,それ以下の外力をさす。
注 2  形態椎体骨折のうち,3分の 2は無症候性である。鑑別診断の観点からも脊椎 X線像を確認することが望ましい。
注 3  その他の脆弱性骨折:軽微な外力によって発生した非外傷性骨折で,骨折部位は肋骨,骨盤,上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨。

日本人女性における骨密度のカットオフ値 
正常
骨量減少
骨粗鬆症 
YAM%評価 80%以上 79 ~ 71% 70%以下
T スコア評価 1以上 1 ~ 2.5の間 2.5以下

 

脆弱性骨折の頻度脊椎椎体骨折>大腿骨近位部>橈骨遠位骨折、上腕骨頸部骨折>骨盤

骨粗鬆症の検査

骨粗鬆症の検査には、骨密度測定、骨代謝マーカーの測定があります。それぞれの長所と短所は表にまとめます。

骨密度測定と骨代謝マーカー検査
長所
短所

骨密度

測定

・診断の主要検査
検査時点及び将来の骨折リスクを示す

半年から₁年以上で変動
・被ばくあり

骨代謝

マーカー

・被ばくなく、簡便
全身の骨代謝状態がわかる
将来の骨折リスクを予測
₁か月から₃か月で変動

・部位ごとの骨代謝状態を調べることは不可能

 

骨代謝マーカーの種類

骨代謝マーカーには、「骨吸収マーカー」、「骨形成マーカー」があります。骨粗鬆症の病態の評価、治療薬選択時の診断補助、薬物治療効果の評価に有用です。

骨代謝マーカーの特徴
種類 マーカー名 MSC(%)#1 腎機能低下の影響

骨吸収マーカー

TRACP-5b(血清)#2 12.4 受けにくい
DPD(尿) 23.5 受けやすい
NTX(血清、尿) 16.3、27.3 受けやすい
CTX(血清、尿) 23.2、23.5 受けやすい
骨形成マーカー BAP(血清) 9.0 受けにくい
P1NP(血清) 14.4 受けにくい
骨マトリクス関連マーカー ucOC(血清) 32.2 受けやすい

#1   最小有意変化(MSC):各骨代謝マーカーついて検討された日間変動を2倍することで求められる値。治療前後でマーカー値の変化はこの値を超えて変化した場合に、その変化は日間変動に起因するものではなく、治療による変化であると判定されます。

#2  骨吸収マーカーTRACP-5b(トラップファイブ ビー)は、MSCの小さい鋭敏なマーカーです。食事摂取や腎機能低下の影響を受けないため、使いやすい。

骨粗鬆症の予防

骨粗鬆症を未然に発見し、骨折を防ぐことが非常に重要です。症状がない方も、定期的な骨密度測定をお勧めします。

予防法としては、

・カルシウム、ビタミンD・K、リン、マグネシウム(牛乳・魚・納豆・海藻など)をしっかり摂る。

・喫煙している方は禁煙し、アルコールは控えめにする。

・散歩などの運動、日光浴をする。

骨粗鬆症の治療

分類

大きく分けて①骨吸収抑制薬、②骨形成促進薬、③骨吸収抑制・骨形成促進の両方の作用を持つ薬剤、④そのほかにの4種類があります。

薬剤、特徴

骨吸収抑制

 

SERM

●エビスタ錠(60mg) 1回1錠 1日1回[ラロキシフェン]
●ビビアント錠(20mg) 1回1錠 1日1回[バゼドキシフェン]
※骨のエストロゲン受容体に選択的に作用することで骨吸収を抑制。閉経後まもない例などに使用
※頻度は非常に稀ですが静脈血栓塞栓症が挙げられます。

ビスホスホネート(BP)

●ボナロン35mg     週1回1錠
●ベネット17.5mg  週1回1錠
●ベネット75mg       月1回1錠
●リカルボン50mg   月1回1錠
●ボンビバ100mg    月1回1錠

●アレンドロン酸点滴静注バッグ900μg  月1回15分以上かけて点滴静注
●ボンビバ静注シリンジ1mg         月1回1mg緩慢に静注
●リクラスト点滴静注液5mg   年1回15分以上かけて点滴静注

顎骨壊死、非定型大腿骨骨折、低Ca血症、急性期反応に注意する。近年、BPの長期投与と大腿骨非定型骨折や顎骨壊死の関係が報告されています。骨粗鬆症の治療効果を判定しつつ、他剤への変更や休薬も選択されます。

抗RANKL抗体薬  ●プラリア皮下注(60mg) 1回60mg 6カ月1回 [デノスマブ]
※血中のカルシウム濃度が低下し手足の震えや痙攣が起こることがあります。定期的な血液検査が必要です。
骨形成促進

副甲状腺ホルモン

(テリパラチド) 

●フォルテオ皮下注 1回20µg 1日1回(自己注射2年間 
テリボン皮下注(56.5µg) 1日1回 週1回 2年間 
●テリボン皮下注 (28.2µg)1日1回 週2回 2年間

骨折の危険性の高い症例に骨形成、代謝回転を高めることを目指し。治療中の注意点として、投与可能期間が2年間のみである。
※悪性腫瘍既往者にはその適応を慎重に検討。またCa剤との併用では高Ca血症に注意。

骨形成促進+骨吸収抑制

抗スクレロスチン

モノクローナル抗体

●イベニテイ皮下注(105mg) 1回210mg 月1回 1年間[ロモソズマブ]
※骨折の危険性の高い症例に使用
※1年以内の心筋梗塞や狭心症・脳梗塞を発症した方は、投与は控えます。

 
その他

 
 
ビタミンD ●エデイロール0.75µg  1日1回1カプセル[エルデカルシトール]
●アルファロール0.75~1.0µg 1日1回 [アルファカルシドール]
●ロカルトロール0.25µg  2Cap分2[カルシトリオール]
※筋肉量維持や転倒予防に対する効果が証明されています。
※高カルシウム血症、腎機能障害に注意する。
ビタミンK ●グラケーカプセル(15mg)3Cap分3[メナテトレノン]
※腰痛や背中の痛みが改善するとともに、骨密度の増加や骨折予防効果も期待できます。
※ワーファリンとの併用は原則としてできません
ビタミンD+カルシウム+カルシウム

●デノタスチュアブル配合錠 1日1回2錠
※プラリア投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防に使用される。

選択

骨吸収抑制薬の選択は、患者の骨折リスク、年齢、併存疾患、腎機能、服薬アドヒアランスなどを考慮して行います。以下に、患者の状態別の薬剤選択のポイントを示します。

患者像 推奨薬剤
大腿骨近位部骨折のリスクが高い高齢者 ・BP製剤(特にアレンドロン酸)
・デノスマブ(プラリア)
内服困難な患者 ・静注ビスホスホネート製剤(ボンビバ、リクラスト)
・デノスマブ(プラリア皮下注)
 腎機能低下患者 ・デノスマブ(腎排泄されないため)
・低用量のビスホスホネート(腎機能に応じた調整が必要)
複数の椎体骨折を有する症例、または骨吸収抑制薬使用中に骨折を生じた例 テリパラチドへの切り替え
若年閉経後女性 SERM(ラロキシフェン、バゼドキシフェン)

          治療期間と薬剤切り替えの考え方

          • ビスホスホネート製剤:3〜5年使用後、骨折リスクを再評価
            • 高リスク患者:継続または他剤への切り替え
            • 低リスク患者:休薬を検討
          • デノスマブ:中止時に骨吸収が一過性に亢進するため、中止時には他の骨吸収抑制薬への切り替えが推奨される
          • テリパラチド:24ヶ月間の限定使用後、骨吸収抑制薬への切り替えが必要

          治療効果のモニタリング

          • 骨代謝マーカー:治療開始3〜6ヶ月後に測定
          • 骨密度測定:治療開始1年後、その後は1〜2年ごとに測定
          • 新規骨折の評価:定期的なX線検査や身長測定

          骨吸収抑制薬の選択においては、エビデンスに基づく有効性評価(A〜C)を参考にしつつ、個々の患者の状態や生活背景を考慮した総合的な判断が重要です。また、カルシウムとビタミンDの十分な摂取は、すべての骨粗鬆症治療の基本となります。

          参考文献