
循環器疾患
循環器疾患
人間の体内には血液が循環しています。血液を全身に循環させるポンプの働きをするのが心臓です。運搬経路になるのが血管です。これら心臓・血管の病気をまとめて循環器疾患といいます。心疾患には、下記のように様々な疾患が含まれています。
・高血圧:動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態です。
・心不全:心臓の機能が弱まり、十分なポンプとしての役割を果たせなくなる状態です。あらゆる心臓病は心不全の原因となり得ます。症状が安定しているかどうかによって、心不全は大きく二つに分類されます。それなりに体全体のバランスがとれ、状態が安定している場合を「慢性心不全」、安定した状態から急激に悪化する場合を「急性心不全」といいます。
・虚血性心疾患:心臓の筋肉を栄養する冠(状)動脈という血管の狭窄や閉塞によって引き起こされる病気。虚血性心疾患には、心筋が一時的に血液不足になって胸に痛みを引き起こす「狭心症」と、完全に血管が詰まってしまい、胸に激烈な痛みを生じたり「心筋梗塞」に大きく二つに分類されます。
・不整脈:脈が遅すぎる「頻脈」、脈が速すぎる「徐脈」、脈が飛ぶまたは乱れる「期外収縮」など
・弁膜症:心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があります。血液を一方向に効率よく循環させるため、左右の心室の出入口にドアみたいな“弁”が存在し、それぞれ僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁と呼ばれます。弁膜症には大きく2つのタイプがあります。弁の開きが悪くなる状態が「狭窄症」、弁の閉じが不完全となって血液が逆流してしまう状態が「逆流症(閉鎖不全症)」です。
・心筋症:心臓の筋肉そのものに問題がある病気のことを心筋症と呼びます。心筋症の中には、拡張型心筋症や肥大型心筋症、虚血性心筋症や心サルコイドーシス、心アミロイドーシス、心Fabry病などがあります。
・動脈疾患:大きな血管は「破れる」「裂ける」病気や小さな血管は「狭くなる」「詰まる」病気が含まれています。動脈が徐々に拡大し、破裂する可能性があるのが大動脈瘤です。血管壁の中に血液が入っていき、壁が裂けていくのが大動脈解離です。
また喫煙や高血圧、糖尿病、脂質異常症などを原因で動脈が硬くなって弾力性が失われた状態「動脈硬化」といいます。血管壁にプラークがついて血管内が狭くなったことにより、血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなります。脳には「脳梗塞」、心臓には「狭心症」や「心筋梗塞」、腎臓には「腎硬化症」、足には「閉塞性動脈硬化症」を引き起こします。
・静脈疾患:
静脈疾患には下肢の皮下の静脈が太くなったり曲がったりする病気「静脈瘤」、浅い部位におこる血栓「血栓性静脈炎」、深い部位に起こる血栓「深部静脈血栓症・エコノミークラス症候群」、血栓が血流にのって肺動脈に詰まってしまう「肺塞栓症」があります。
・リンパ系疾患:リンパ疾患にはリンパ系の閉塞によりリンパ液の貯留を起こす病気(リンパ浮腫)、感染によりリンパ節が炎症を起こす病気リンパ節炎、ひっかき傷や創傷から、最近がリンパ管に沿って皮膚やそのすぐ下の組織に生じるリンパ管炎があります。
このような症状がある方はご相談ください。
・動悸
・むくみ
・息苦しい
・胸が痛い
・背部痛
・冷や汗
・体がだるい
・めまい
血圧が慢性的に高い状態が続く状態です。診察室では少なくとも2回以上の異なる機会で、収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。また自宅で測る家庭血圧の場合は、下表のように診察室よりも低い基準が用いられます。
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 | ||
正常高値血圧 | 120-129 かつ <80 | 115-124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130-139 かつ/または 80-89 | 125-134 かつ/または 75-84 | ||
I度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 | 135-144 かつ/または 85-89 | ||
II度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 | 145-159 かつ/または 90-99 | ||
III度高血圧 | ≧180 かつ/または ≧110 | ≧160 かつ/または ≧100 | ||
(孤立性)収縮期高血圧 | ≧140 かつ <90 | ≧135 かつ <85 |
高血圧には、原因のはっきりしない本態性高血圧、他の疾患や薬剤の副作用が原因で起こる二次性高血圧があります。
本態性高血圧とは、原因をひとつに同定することのできない高血圧で、遺伝的素因(体質)や食塩の過剰摂取、肥満など様々な要因が組み合わさって発症します。中年以降にみられ、食生活を中心とした生活習慣の改善が予防・治療に非常に大切です。
二次性高血圧とは、血圧が高くなっている原因疾患が特定できる高血圧です。若年で発症する高血圧、急速に発症した高血圧、治療抵抗性の高血圧、臓器障害が強い場合、夜間高血圧、低カリウム血症などの電解質異常を伴う高血圧などに二次性高血圧を疑います。
本態性高血圧 | 二次性高血圧 | |
頻度 | 約9割 | 10〜15% |
年齢 | 高齢者が多い | 若年者に多い |
原因 | 加齢、体質などの遺伝的な要因や、塩分の過剰摂取、肥満、過度の飲酒、運動不足、ストレス、喫煙といった生活習慣など | 血圧を上昇させるホルモンの異常や心臓・腎臓・血管の病気、薬剤の副作用など |
治療 | 生活習慣の改善と降圧薬 | 原因治療 |
原因 |
疾患 | |
腎実質性高血圧 | 糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎 | |
腎血管性高血圧 | 腎動脈狭窄(線維筋性異形成、高安病、腎動脈硬化) | |
内分泌疾患による高血圧 |
・原発性アルドステロン症:副腎皮質腺腫、副腎皮質過形成 ・甲状腺機能異常:甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症など |
|
薬剤の副作用 |
ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、乾燥など)として起こる薬剤誘発性高血圧 など |
若年発症、肥満体型、治療抵抗性高血圧、重症高血圧(>180/110mmHg)、突然発症、臓器障害(左室肥大、眼底所見異常、神経症状など)などは二次性高血圧を疑わせる所見です。そのため、場合に血液・尿検査、心電図、心エコー、腹部エコーなどを行うときがあります。
血圧が高くなると、動脈と呼ばれる血管に負担がかかります。その結果、全身の合併症が引き起こされやすくなります。
●高血圧性心肥大
●心不全
●心筋梗塞・狭心症
●脳出血・脳梗塞などの脳血管障害
●眼底網膜病変
●高血圧性腎障害・腎不全
●閉塞性動脈硬化症
高血圧の治療には、生活習慣の改善と血圧を下げる飲み薬(降圧剤)による治療があります。高血圧は薬を飲んでいれば必ず良くなるというものではなく、可能な範囲で生活習慣の改善も一緒に行っていくことが大切です。
高血圧症の改善対策は、生活習慣の見直しに尽きます。以下に、10の対策を示します。
①塩分は控えめに
②野菜や果物を豊富に摂取
③コレステロールや飽和脂肪酸を摂り過ぎないように
④お酒を飲み過ぎないように
⑤タバコはやめるように
⑥適度な運動をするように
⑦肥満を解消するように
⑧ストレスを溜めず、充分な睡眠をとるように
⑨急激な温度差に気をつける
⑩便秘にならないように
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代表薬剤 |
作 用 |
Ca拮抗薬 |
ノルバスク、アムロジン、ニフェジピン、ヘルベッサーなど |
カルシウムイオンの血管内への流入、血圧を低下させる |
ARB |
ミカルディス、ディオバン、ブロプレス、ニューロタン、オルメテックなど |
アンジオテンシンIIがその受容体への結合を妨げ、血管を広げ、血圧を低下させる |
ACE阻害剤 |
セタプリル、ゼストリル、タナトリル、コバシルなど |
血管を収縮させたり、腎臓でのナトリウムや水分の排出を押さえて血液量を増やすアンジオテンシンIの産生を抑え、血管を広げて血圧を低下させる |
利尿薬 |
ナトリックス、アルダクトン、フルイトラン、ラシックスなど |
腎臓で、塩分と水分を外に出すことで血圧を低下させる |
β遮断薬 |
テノーミン、メインテート、ロプレソール、インデラルなど |
心臓の交感神経の興奮をおさえ、臓から出る血液の量を減らし、収縮力を弱めることを介し、血圧を低下させる |
MR拮抗薬 |
スピロノラクトン、セララ、ケレンディア、ミネブロ |
腎臓の遠位尿細管および接合集合管のミネラルコルチコイド受容体(MR)に対する作用により血圧を下げる。 |
ARNI |
エンレスト |
降圧作用や過度な水分貯留の改善作用などがあり、心臓保護作用も期待できる |
α1遮断薬 |
カルデナリン | 血圧を上げる神経の働きを抑えて、血管を広げ、血圧を下げる |
製品名 | 成分A | 成分B | |
---|---|---|---|
ユニシア カムシア |
カンデサルタン(ブロプレス) | アムロジピン | |
LD | 8mg | 2.5mg | |
HD | 8mg | 5mg | |
エクスフォージ アムバロ |
バルサルタン(ディオバン)80mg | アムロジピン5mg | |
ミカムロ テラムロ |
テルミサルタン(ミカルディス) | アムロジピン | |
AP | 40mg | 5mg | |
BP | 80mg | 5mg | |
レザルタス | オルメサルタン(オルメテック) | アゼルニジピン | |
LD | 10mg | 8mg | |
HD | 20mg | 16mg | |
アイミクス イルアミクス |
イルベサルタン(アバプロ) | アムロジピン | |
LD | 100mg | 5mg | |
HD | 100mg | 10mg | |
ザクラス | アジルサルタン(アジルバ) | アムロジピン | |
LD | 20mg | 2.5mg | |
HD | 20mg | 5mg | |
アテディオ | バルサルタン(ディオバン)80mg | シルニジピン(アテレック)10mg |
製品名 | 成分A | 成分B | |
---|---|---|---|
エカード | カンデサルタン(ブロプレス) | ヒドロクロロチアジド | |
LD | 4mg | 6.25mg | |
HD | 8mg | 6.25mg | |
プレミネント ロサルヒド |
ロサルタン(ニューロタン) | ヒドロクロロチアジド | |
LD | 50mg | 12.5mg | |
HD | 100mg | 12.5mg | |
コディオ バルヒディオ |
バルサルタン(ディオバン) | ヒドロクロロチアジド | |
MD | 80mg | 6.25mg | |
EX | 80mg | 12.5mg | |
ミコンビ テルチア |
テルミサルタン(ミカルディス) | ヒドロクロロチアジド | |
AP | 40mg | 12.5mg | |
BP | 80mg | 12.5mg | |
イルトラ | イルベサルタン(アバプロ) | トリクロルメチアジド | |
LD | 100mg | 1mg | |
HD | 200mg | 1mg |
製品名 | 成分A | 成分B | 成分C |
---|---|---|---|
ミカトリオ配合錠 | テルミサルタン80mg | アムロジピン5mg | ヒドロクロロチアジド12.5mg |
心不全とは、“心臓の機能が低下することによって、心臓が全身の各臓器に血液を十分に送り出せない状態”です。日本循環器学会の定義では、“心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気”とされています。
心臓機能のうちどの働きがどの程度低下しているのか、その低下が急激におこったのか、徐々に起こったのかによって、さまざまに分類されます。 心不全は、臨床的に左心不全と右心不全、収縮期心不全と拡張期心不全、急性心不全と慢性心不全などに分類されます。 治療上の立場から、急性心不全と慢性心不全の分類法が一番有用です。
心不全の病期ステージはステージAからステージDまでの4つに分けられます。治療方法はステージによって異なります。一人ひとりの症状とステージに合わせた薬物療法を行うことで、進行を防ぐことができます。
ステージA:
心不全リスクは高いが、心疾患は併発していない状態。
ACE阻害薬などの薬物療法を行う。
ステージB:
心疾患は併発しているが、無症候の状態。
ACE阻害薬やβ遮断薬などの薬物療法を行う。また、症例に応じては血行再建を行う。
ステージC:
心不全症候が出現している状態。
集学的治療が望まれる段階。
薬物療法ではACE阻害薬、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬、利尿薬などを服用。
症例に応じて不整脈治療、心臓再同期療法、弁膜症カテーテル治療、外科的治療を行う。
ステージD:
難治性心不全。集学的治療が望まれる段階。
薬物療法ではACE阻害薬、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬、利尿薬などを服用。
症例に応じて不整脈治療、心臓再同期療法、弁膜症カテーテル治療、外科的治療を行う。
心不全の治療方法は、急性心不全と慢性心不全では異なります。
急性心不全での治療目標は、患者さんが自覚している諸症状を緩和し、臓器のうっ血状態を改善することで、救命を図り、容態を安定させることにあります。重症な場合が多く、精査・加療するための入院可能な病院へ迅速に搬送する必要があります。
慢性心不全での治療目標は、
①安静時の自覚症状を軽減すること
②運動耐容能を改善させ、運動時の自覚症状を軽減すること
③長期生命予後を改善すること
多くはクリニックの外来通院が必要です。
・急性心筋梗塞:カテーテル治療(バルーン拡張やステント留置)やバイパス手術(閉塞箇所を迂回する血行路を作る治療)
・弁膜症:弁置換術(弁の取り換え)や弁形成術(弁の修復)など
・不整脈:アブレーションなど。
心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら経過する病気であり、上手に付き合っていく必要があります。ポイントとしては、
①心不全の悪化の原因を避ける
②心不全の悪化のサインに早く気づく
③食事療法・内服を必ず継続し、自己管理を徹底する
・薬の飲み忘れ
・塩分のとりすぎ
・過労・運動不足
・感染(かぜ・肺炎)
・喫煙・お酒の飲み過ぎ
・我慢して受診しないなど
・むくみが増した
・尿の量やトイレに行く回数が減った
・息苦しさが増した
・いつもより脈が速い、ひどい動悸がする
・咳や痰がよくでる
・数日で2kg以上体重が増加した
・食欲がなくなってきた
・ 薬を飲み忘れない
・ 塩分を控える
・ 適度な運動
・ 禁煙・節酒
・ 感染予防
・ 心不全悪化の症状を認めたらすぐかかりつけ医と相談する
狭心症とは心臓を栄養する冠動脈が狭くなることで血液の流れが悪くなり、心筋に十分な酸素が行き渡らなくなるために、胸が圧迫されるような痛みなどの発作が生じる病気です。肩や首、後頭部やみぞおちなどの痛みを感じることもあります。また、発作は一般的に数分で治まります。
・突然の胸の痛みや、締めつけられるような圧迫感
・息切れ、冷や汗、腕や背中の痛みを伴う
・労作などで症状が増強し、安静で軽快する
・症状は15分以内で改善する
・肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などのリスク因子を持っている
狭心症は、冠動脈の狭窄率や、誘因、発作の強さ、発作の頻度によって分類されています。
労作性狭心症:、「階段を上がる」「力仕事をする」「運動する」または精神的に興奮した時におこり、5分以内におさまることが多い。
安静時狭心症、冠攣縮性狭心症:夜間の就寝中や明け方に突然発作がおこり、数分~15分近く続くことがあります。
安定狭心症:発作の起きる状態、発作の強さや回数、持続時間などが一定の範囲にとどまっている状態です。
不安定狭心症:狭心症発作の回数や程度が一定していない状態です。近い将来に心筋梗塞へ進行する可能性が高いので、とくに注意が必要です。
微小血管狭心症:狭心症の発作が起こっているにもかかわらず、冠動脈に狭窄部位が見られない場合や、誘発試験を行っても冠動脈の痙攣が起こらない狭心症。
狭心症の症状が進行して心筋梗塞が発症したときに命の危険が起こります。狭心症の段階で適切な治療を行うことで、心筋梗塞の発症を予防することが重要です。
狭心症治療の基本は動脈硬化を悪化させる生活習慣病を食事・運動・禁煙・薬などで改善すること。薬剤内服で効果がみられない場合はやカテーテル治療やバイパス手術が検討される場合が多いです。
・発作時の症状を鎮める薬:
ニトログリセリンなど…舌下錠とスプレーがあり、発作が起きた場合に備えて携帯し、症状が出たらすぐに使用する。即効性が高く、服用後1~2分で発作の症状を軽減できます。
・症状を予防する薬:
β(ベータ)遮断薬…心拍数を抑え、心臓の負担を軽くする。
カルシウム拮抗薬、硝酸薬…血管を広げる。
・動脈硬化を改善する薬
スタチン…コレステロール値を下げたり、動脈硬化でできたプラーク(血管内壁のこぶ)を安定させる。
・血栓を防ぐ薬
アスピリンなど…血を固まりにくくする。
冠動脈の狭さくが進む場合など、心筋梗塞を起こしやすい狭心症には、カテーテル治療を検討します。カテーテルを冠動脈に挿入し、狭くなった部位をバルーン(風船)やステント(金属の筒)で拡張する血管内治療です。内科的治療であり、体への負担が比較的少なく、入院期間も数日程度で済むケースが多く見られます。
冠動脈の狭くなっている部位や閉塞している部位を迂回し、新しい血管をバイパスとしてつなぐ外科手術です。自分の体内の別の部位にある血管を切り取り、一方を大動脈に、もう一方を冠動脈病変が起こっている部位の先につなぎます。カテーテル治療と比べて患者さんの負担が大きいです。
下肢静脈瘤とは、下肢の静脈が瘤状に拡張して血管がボコボコと浮き出る病気です。
静脈瘤の程度によって症状が異なります。
・軽度:ほとんど症状なし、あるいは軽いむくみやほてり感
・中等度:だるさ、疲労感、こむら返りなど
・重度:激しい痛み、湿疹、色素沈着、潰瘍形成など
下肢静脈瘤には大きく分けて3種類があります。
・伏在静脈瘤:皮下の大伏在静脈や小伏在静脈が拡張し、太くうねりながら浮き出る
・網状静脈瘤:中程度の太さの静脈が網目状に広がり、比較的皮膚に近い部分で見られる
・クモの巣状静脈瘤:細い静脈がクモの巣のように広がり、赤紫色に見えることが多い
症状が比較的軽度な場合には、生活習慣の改善、や弾性ストッキングの着用は有用です。特に弾性ストッキングは血液の逆流を抑え、足のむくみや疲労感を軽減し、病状の進行を遅らせます。肥満が原因となっている場合は体重管理も重要です。
生活習慣のポイントとしては
弾性ストッキング選択のポイント
・圧迫度合い:弱圧~強圧まで様々
・サイズ:足首、ふくらはぎ、太もも周囲のサイズに応じ選ぶ
・種類(丈の長さ):ハイソックスタイプ、ストッキングタイプ、パンティストッキングタイプなど
医療用弾性ストッキングの種類と選択、各種弾性ストッキングの長所と短所、効果と目的に合わせた圧迫圧の選択、禁忌と慎重な使用が必要なケース、弾性ストッキング着用時に注意すべき合併症などについて詳しい知りたい方は、https://www.almediaweb.jp/varix/stockings.htmlをご参照してください。
硬化剤を拡張した静脈に注入し、血管内で炎症を起こして血管を閉塞させる治療法です。小さな静脈瘤やクモの巣状静脈瘤に適し、比較的短時間かつ局所麻酔で行えることから患者さんの負担も少なく済みます。
血管内にカテーテルを挿入し、血管を内側から焼灼して閉塞させる「血管内レーザー治療」や「高周波治療」が主流です。切開が少なく、術後の傷跡も最小限に抑えられるため、美容面や回復の早さの点でメリットが大きいです。
血管内治療が適さない症例や、伏在静脈が大きく拡張している場合には、種々s津が検討されます。皮膚を切開して拡張した静脈を抜去(ストリッピング)する方法は一般的です。
浮腫とは水分が血管やリンパ管外に染み出し、皮下組織に過剰に貯留する状態です。
・圧痕性浮腫:心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、深部静脈血栓症、薬剤性など
・非圧痕性浮腫:甲状腺機能低下症による粘液水腫、リンパ浮腫、好酸球性血管性浮腫、脂肪浮腫など。
症状 | 身体所見 | 検査 | |
心不全 | 呼吸困難、夜間の発作性呼吸困難、疲労感 | 頸静脈怒張、肝腫大、両側性の圧痕性浮腫 | 胸部X線、心エコー、BNP |
肝硬変 | 腹部膨満、易疲労感、黄疸 | 腹水、蜘蛛状血管腫、肝掌 | 肝機能検査、腹部超音波、アルブミン |
腎不全 |
尿量減少、血尿、蛋白尿 |
顔面や下肢の浮腫 |
尿検査、腎機能検査、腎超音波 |
深部静脈血栓症 |
片側性の下肢痛、腫脹、発赤 |
片側性の圧痕性浮腫、腓腹筋把握痛 |
Dダイマー、下肢静脈エコー |
リンパ浮腫 |
片側または両側の下肢の腫脹、重さ感 |
非圧痕性浮腫、皮膚硬化 |
下肢静脈エコー |
薬剤性浮腫 |
下肢の腫脹、体重増加 |
両側性の圧痕性浮腫 |
投薬歴の確認(カルシウム拮抗薬、NSAIDs、ステロイドなど) |
甲状腺機能低下症 |
疲労感、寒気、便秘、体重増加 |
非圧痕性浮腫、皮膚乾燥 |
甲状腺機能検査 |
静脈不全 |
下肢のだるさ、痛み、夜間の浮腫の悪化 |
静脈瘤、色素沈着 |
下肢静脈エコー、ドップラー検査 |
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化は原因で血管が狭くなったり、詰まったりすたるため、血液の流れが悪くなり、栄養や酸素を十分に送り届けなくなる病気です。動脈硬化は、さまざまな病気を引き起こす原因となります。
◆脳の動脈の狭窄・閉塞→一過性脳虚血発作や脳梗塞
◆心臓の冠動脈が狭窄・閉塞→狭心症や心筋梗塞
◆下腿・足の動脈が狭窄・閉塞→下肢閉塞性動脈硬化症(PAD)
危険因子は、高齢、男性、糖尿病、喫煙、高血圧、脂質異常症など。
この疾患は慢性的な経過をとることが多いため、下記の臨床症状分類(Fontain分類)が病気の進⾏度をみる指標の1つになります。初期症状は『冷感』や『しびれ感』であるため見逃したり、軽く考えて放置してしまいがちです。
◆Ⅰ度・・・冷感・しびれ感
・手足が冷たい
・手足がしびれる
・手足の指が青白い
◆Ⅱ度・・・間歇性跛行
・一定距離を歩くと、主にふくらはぎなどが締め付けられるように痛くなり、休まなければならない。(数分で回復)
・階段をのぼるのは特につらい
◆Ⅲ度・・・安静時疼痛
・じっとしていても手足が痛み、夜もよく眠れない
・刺すような痛みが常に持続している
◆Ⅳ度・・・潰瘍・壊死
・手足に治りにくい潰瘍ができる
・壊死部は黒くなる
◆上腕と⾜での⾎圧⽐(ABI=⾜での⾎圧測定値/上腕での⾎圧測定値)で、下肢の循環障害の有無をまず判断します。
1.0が正常、0.9未満が異常で、重症例では0.5以下のことが多い。
◆超音波や動脈造影:下肢動脈血管の太さや狭窄、閉塞を調べる
◆サーモグラフィー:皮膚表面の温度を調べる
生活習慣の改善(禁煙・下肢の清潔保持等)・生活習慣病(糖尿病・高血圧・高コレステロール血症等)の治療などが基本です。
①食事・運動療法
②薬物療法:抗血小板薬、抗凝固薬、血管拡張薬、血栓溶解剤等
③血管内治療:a)バルーンカテーテルによる拡張術、b)ステント留置術
④バイパス術
⑤足趾や患肢切断術(壊疽例)