起立性調節障害は、自律神経力が弱いためにおこる自律神経失調症のひとつです。3) 代表的な症状は、立ちくらみ、立っていると気持ち悪くなりひどいと倒れる(いわゆる脳貧血症状)、朝起きられない、などです。 朝起きられず、特に午前中の調子が悪いので、不登校につながることもあります。
症状
1) 立ちくらみ、朝起きられない、気分が悪い、長い間立っていたり立ち上がったりするときにふらついたり気を失ったりする、頭が痛いなどです。症状は午前中に強く、午後からは軽減することが多いです。
2) 症状は立っている時や座っている時に出ることが多く、横になると改善します。
3) 夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができるようになることが多いです。
4) そうすると夜に目がさえて寝つけず、起床時間が遅くなり、悪化すると昼夜逆転のような生活になってしまいます。
診断
1) 立ちくらみ、失神、気分不良、朝起きられない、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどの症状が3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います。
2) 客観的検査としては、新起立試験といって10分間寝かせた後に起立し、血圧や心拍数の変化を評価する試験もあります。
3) その他の病気(貧血や甲状腺機能の異常など)を否定しておくことも必要です。
治療
1) 軽めの運動(散歩や縄跳び)を普段から心がけ、また夜更かしをしない規則正しい生活をするようにします(決まった時間に就寝し、就寝後はスマホを手元から離す)。
2) 循環血液量を増やすため、水分や塩分を少し多めにとるようにします。
3) 立ちくらみが強い場合には、普段から急に立ち上がらないように気をつけ、気持ちが悪くなるようなら早めにしゃがんだり横になったりするようにします。
4) 起立時に倒れる場合や、朝起きられず日常生活に支障が強い時には内服薬を併用します。薬物には、血管を収縮させ血圧低下を防ぐ薬剤が使用され、メトリジンやリズミックなどがあります。漢方薬が有効な場合もあります。
5) 心理的・社会的ストレス(学校や家庭)が症状を悪化させている可能性もあります。保護者、学校関係者と協力してストレスの軽減に努めることも大切です。
今後の見通
1) 思春期に自律神経の働きが弱くなってしまうことが原因であり、加齢に伴い自律神経が成長し安定すると必ず良くなる疾患です。そのため、厳密な意味での治療は“成長を待つ”ということになります。その間、症状を緩和し日常生活に不都合が出ないように、上記のような治療を行うと考えてください。
2) 保護者や学校関係者は症状から、「なまけ癖がある」などと考えてしまうこともありますが、「この病気は身体疾患(からだの病気)であり、『根性』や気持ちの持ちようだけでは治らない」ということを理解してもらうことが必要です。