
バレット食道とは
食道と胃の粘膜の性質は異なっており、通常食道粘膜は重層扁平上皮に、胃粘膜は円柱上皮に覆われています。食道粘膜(重層扁平上皮)が胃粘膜(円柱上皮)のように変化した状態は「バレット食道」と呼ばれています。英語ではBarrett’s esophagus、BEと略くしています。短い(3cm以下)バレット食道はshort segment (SSBE)、長い(3cm以上)バレット食道はlong segment Barrett’s esophagus (LSBE)と分類します。
発見率
SSBEの発見率は胃カメラを受けた人の約20%であることに対してLSBEの発見率は約0.2%とされています。バレット食道はがん化することがあります。SSBEでは年率0.2%程度、LSBEでは年率0.8%程度の割合で食道癌が発生すると報告されています。年率とは一年間のうちにがんが発生する割合です。
原因
原因ははっきりしません。主な原因は、胃酸が食道へ逆流することで生じる慢性的な刺激です。食道粘膜は胃酸に対する耐性が低く、繰り返し胃液に晒されることで炎症が起こり、逆流性食道炎を引き起こします。この炎症が改善と再発を繰り返すうちに、食道の本来の粘膜である扁平上皮が、胃や腸に見られる円柱上皮へと置き換わってしまい、バレット食道へと進行すると推測されています。
症状
バレット食道自体はほとんど無症状です。ただし原因と逆流性食道炎によるのどの違和感、吐き気、胸やけ、げっぷ、呑酸などの逆流性食道炎症状が出現することはあります。
検査・診断
バレット食道は隆起したり、窪んだりすることのない、平坦な形態をとる疾患です。そのため、バリウム検査では発見することが不可能で、胃カメラでのみ診断することが可能です。
治療
欧米では食道がん全体に占めるバレット食道がんの割合は50%以上ですが、日本では10%前後です。そのため、欧米と日本では方針が大きく異なります。欧米では(条件はありますが)バレット食道に対して内視鏡を用いた予防的焼灼が行われています。一方で、日本では胃カメラによる経過観察が一般的です。当院では定期的な(2年に1回程度の)経過観察を推奨しております。