
嘔吐の原因分類
-
1.消化管性:胃炎・胃潰瘍・胃腸炎・胃排出遅延
-
2.中枢性:片頭痛、めまい(前庭性)、脳圧亢進
-
3.薬剤性:抗生剤、GLP-1、抗がん剤
-
4.代謝性:腎不全、肝不全、妊娠悪阻
-
5.前庭性(乗り物酔い):内耳性めまい
-
6.精神・自律神経性:ストレス、過換気
代表的な治療薬とその特徴
1.メトクロプラミド(プリンペラン)
-
・D2遮断(中枢+末梢) → 制吐作用が強い+軽い運動促進(中枢作用あり)
-
・嘔吐全般に対応
-
・錐体外路症状に注意 → 「嘔吐が強い」なら最有力
2.ドンペリドン(ナウゼリン)
-
・末梢D2遮断 → 中枢副作用少ない
-
・制吐作用はプリンペランドより弱い
-
・QT延長に注意 → 妊娠悪阻・高齢者で使いやすい
3.モサプリド(ガスモチン)
-
・選択的5-HT4刺激 → 純粋な運動促進
-
・胃もたれ・早期飽満感中心の嘔気
4.イトプリド(ガナトン)
-
・末梢D2遮断+ACh増強で運動促進強い
-
・胃排出遅延型の嘔気に強い
5.トラベルミン(抗ヒスタミン)
-
前庭性(内耳)に特化 → めまい・乗り物酔いの嘔吐に最適
6.セファドール
作用機序による分類
消化管運動亢進薬(消化管運動改善薬・調整薬)は、作用する受容体や仕組みの違いにより、主に4つの種類に分けられます。
1.ドパミンD2受容体拮抗薬(抗ドパミン薬)
- 効能効果:胃の動きを抑えるドパミンの働きをブロックし、アセチルコリンを出やすくして運動を亢進させます。吐き気止めとしても使われます。
- 代表薬:プリンペラン、ナウゼリン、イトプリド(ガナトン)
| 項目 | プリンペラン | ナウゼリン | イトプリド |
|---|---|---|---|
| BBB透過性 | 高い(中枢へ移行) | 極めて低い(1%未満) | 低い(ほぼ末梢) |
| 作用部位 | 中枢+末梢D2遮断 | 末梢D2遮断 | 末梢D2遮断+AChE阻害 |
| 主な効果 | 制吐作用強い(CTZ)+運動促進 | 制吐・運動促進(末梢) | 運動促進作用が強い |
| 中枢副作用 | 多い(EPS) | ほぼなし | 少ない |
| 心血管リスク | 少ない | QT延長・不整脈 | 少ない |
| 排泄 | 腎排泄 → 腎機能低下で蓄積 | 主に肝代謝 | 主に腎排泄 |
| 特徴 | 中枢性嘔吐に強い | 高齢者向き・坐剤あり | FDでよく使う |
2.セロトニン5-HT4受容体作動薬
- ・効能効果:セロトニン受容体を刺激してアセチルコリンの放出を促し、胃や腸の動きを活発にします。
- ・代表薬:モサプリド(ガスモチン)
- ・適応:機能性ディスペプシアや慢性便秘症など、消化管運動機能の低下が関与する疾患に対して用いられる。特に便秘型過敏性腸症候群や胃排出遅延症状にも適応されることがある
3.アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
- ・効能効果:アセチルコリンの分解を抑制することで副交感神経を刺激し、消化管運動を強め、遅延した胃排出時間や通過時間の正常化を目的として使用されます。
- ・代表薬:アコファイド
- ・適応:FDに対して保険適用のある初めての薬です。特に食後愁訴症候群(PDS)に効果が確認されており、心窩部痛や灼熱感(EPS)には有効性が確認されていません
4.アセチルコリン作動薬・副交感神経刺激薬
- ・副交感神経と同じような刺激を与えて、胃腸の運動と緊張を高め、胃液の分泌を促進する作用があります。また、膀胱の排尿筋を収縮させ、膀胱内圧を高めることで排尿効果を促進します。
- ・代表薬:ベサコリンなど
- ・適応:慢性胃炎、迷走神経切断後手術後、分娩後の腸管麻痺、麻痺性イレウス、手術後の低緊張状態など。
5.消化管運動調律薬
- ・効能効果:胃腸の動きが弱いときは活発にし、逆に強すぎるときは抑えるという双方向性の作用を持ちます。
- ・代表薬:トリメブチンマレイン酸塩(商品名:セレキノン)
- ・適応: 過敏性腸症候群(IBS)や慢性胃炎による消化器症状に効果があります。
- ・用法・用量: 通常、成人は1日3回、1回100〜200mgを服用します。
- ・処方薬と市販薬の混同: 処方薬のセレキノン錠は生産中止ですが、市販薬のセレキノンSはまだ購入可能です。 代替薬としては、トリメブチンマレイン酸塩のジェネリック医薬品や、コロネル、ポリフルなどの整腸剤が推奨されています。
原因別の第一選択薬
| 原因 | 第一選択 | 補助的選択肢 | 漢方 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 消化管性 | プリンペラン | ナウゼリン、ガスモチン | 六君子湯、半夏瀉心湯、平胃散 | 胃排出遅延+嘔気に強い |
| 胃排出遅延 | ガスモチン / イトプリド | プリンペラン | 中枢副作用を避けたい場合に有用 | |
| 前庭性めまい | トラベルミン | セファドール | 苓桂朮甘湯、五苓散 | 内耳性の嘔吐は抗ヒスタミンが第一選択 |
| 片頭痛 | プリンペラン | ナウゼリン | 呉茱萸湯 | 片頭痛の嘔吐は中枢性 → D2遮断が有効 |
| 妊娠悪阻 | ナウゼリン | プリンペラン(慎重) | 半夏厚朴湯、六君子湯 | 中枢副作用を避けるためナウゼリンが使われることが多い |
| 薬剤性 | プリンペラン | ナウゼリン | 小半夏加茯苓湯、安中散 | CTZ作用が強く有効 |
| 抗がん剤 | 5-HT3拮抗薬 | プリンペラン | 5-HT3拮抗薬が標準 | |
| 自律神経性・ストレス性 | プリンペラン | 半夏厚朴湯、柴胡桂枝湯 | 胃の停滞+嘔気に対応 | |
症状別の即時選択
| 症状 | 最適薬 |
|---|---|
| 嘔吐が強い・止まらない | プリンペラン |
| 胃もたれ+嘔気 | ガスモチン/ イトプリド |
| めまい+嘔吐(前庭性) | トラベルミン |
| 片頭痛+嘔吐 | プリンペラン |
| 妊娠悪阻 | ナウゼリン |
| 薬剤性 | プリンペラン |
| 高齢者で安全性重視 | ナウゼリン/ ガスモチン |
漢方の漢方治療
詳細は🌿こちらです。
まとめ
【嘔吐】
│
├── ① まず「危険サイン」を確認
│ ・激しい腹痛(特に右上腹部・みぞおち)
│ ・高熱
│ ・意識障害
│ ・脱水(尿量↓)
│ ・血便・黒色便
│ → あり:緊急評価(腹部エコー・血液検査)
│
└── ② 危険サインなし → 原因を大きく5分類
│
├── 1. 消化管性(胃腸炎・胃炎・胃潰瘍・胃排出遅延)
│ ・腹痛、胃もたれ、食後悪化
│ → 第一選択:プリンペラン
│ → 胃もたれ中心:ガスモチン / イトプリド
│
├── 2. 前庭性(めまい・乗り物酔い)
│ ・回転性めまい、頭を動かすと悪化
│ → 第一選択:抗ヒスタミン(トラベルミン)
│
├── 3. 中枢性(片頭痛・脳圧亢進)
│ ・頭痛、光過敏、片側性
│ → 第一選択:プリンペラン
│
├──4. 薬剤性(抗生剤・GLP-1・抗がん剤)
│ ・新規薬剤開始後
│ → 一般的選択肢:プリンペラン
│ → 化学療法:5-HT3拮抗薬(標準)
│
└──5. 代謝性・妊娠悪阻・自律神経性
・妊娠初期、ストレス、脱水
→ 妊娠悪阻:ナウゼリン(一般的選択肢)
→ 自律神経性:プリンペラン




