
心身症とは
心身症とは、心理社会的なストレスが主な原因・増悪因子となって身体の病気が引き起こされたり、悪化したりする状態です。身体の器官には実際に病理学的変化が生じており、「気のせい」では説明できない本物の身体疾患です。治療に薬物療法に加え心理的アプローチも欠かせません。心身症の患者さんがうつ病や不安障害を合併することは珍しくなく、総合的なアプローチが必要です。
症状
心身症で比較的よくみられる症状は以下の通りです
- 胃腸系症状・・・腹痛、胃痛、下痢、便秘、嘔吐など
- 呼吸器症状・・・呼吸苦、喘鳴、過呼吸など
- 循環器症状・・・胸痛、動悸など
- 代謝・内分泌症状・・・口渇、多尿、しびれなど
- 皮膚症状・・・かゆみ、発疹、脱毛など
- 筋・骨系症状・・・腰痛、頭痛、肩こりなど
- 婦人科系症状・・・不正出血、月経不順など
- 泌尿器系症状・・・頻尿など
身体の検査では異常が見つからないのに、症状が続くことが特徴です。
心身症が起こるしくみ
心身症は「気のせい」ではありません。 医学的には以下のような変化が起こっています:
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・自律神経の乱れ(交感神経が過剰に働く)
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・ストレスホルモン(コルチゾール)の変動
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・腸脳相関(腸の動きがストレスで変化)
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・睡眠の質低下による痛み・疲労の増悪
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・感覚過敏(痛みや不快感を感じやすくなる)
内科的疾患と密接に関係しており、医学的治療が必要な“身体の病気”です。
心身症を疑わせるポイント
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・症状に波がある: 症状が一時的に悪化したり改善したりする。
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・治っても再発する: 症状が再発することがある。
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・なかなか治らない: 薬を増やすことがあり、改善が見られない。
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・明らかなストレスのきっかけがある: ストレスが症状の引き金となる。
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・最近大きな生活上の変化があった: 生活の変化が症状に影響を与えることがある。
心身症の診断
基本的には臨床的な診断になります。
1. 「体の病気」を確認するための検査
必要な検査(血液検査、心電図、腹部レントゲン、胃カメラ(必要時)、自律神経検査など)を行います。身体疾患が否定できれば、心身症の可能性を強く疑います。
2. 身体症状の特徴を確認する
症状の所属臓器は異なっても、以下のような共通する6つの症状パターンがあります。
⓵ストレスとの連動
②検査異常の乏しさ(機能性)
③症状の変動性
⓸通常の薬物治療への抵抗
⑤複数の身体症状が重なる
⑥不安・抑うつの合併
3. 鑑別診断
うつ病や不安症の「身体に出る部分」が、ちょうど「自律神経失調症」と呼ばれる状態と、見た目が重なります。だから、身体症状だけを見ていると、区別がつかない。本人も「体の不調=自律神経の問題」と捉えて、こころの病気だとは思い至らないことが多い。見極めには、身体症状だけでなく、こころの状態や、症状の出方のパターンまで含めて見る必要があります。
| 項目 | 自律神経失調症 | 不安症 | うつ病 |
|---|---|---|---|
| 主役(中心となる症状) | 身体の不調(動悸・めまい・だるさ・胃腸症状) | 不安・恐怖 | 気分の落ち込み・意欲低下 |
| 症状の中心 | 身体症状が主 | 不安が身体症状を駆動 | 気分の沈みが主 |
| 気分の状態 | 比較的保たれる | 不安が前面に出る | 一日中沈む状態が続く |
| 楽しめるか(重要) | 好きなことはまだ楽しめる | 不安で楽しめないことがある | 何をしても楽しめない(興味喪失) |
| 身体症状 | 多い(自律神経症状) | 多い(不安由来) | 出るが中心ではない |
| 症状の引き金 | ストレス・疲労・生活リズム | 特定場面・対象への恐怖 | 心のエネルギー低下 |
| 波の出方 | ストレスと連動して波打つ | 不安状況で急激に悪化 | 日内変動はあるが全体的に沈む |
| 典型例 | 忙しさ・寝不足で悪化 | パニック発作・予期不安 | 抑うつ・興味喪失・自責感 |
| 経過の特徴 | 整えると改善しやすい | 不安が続くと悪化しやすい | 放置すると長期化しやすい |
| 治療の方向性 | 生活リズム調整・ストレス対策・自律神経調整薬 | 不安への心理的介入・抗不安薬 | 抗うつ薬・休養・心理療法 |
大まかには、体の不調が中心で気分や不安が比較的軽いなら自律神経の乱れ寄り、気分の落ち込みと「楽しめなさ」が前面ならうつ病、不安や恐怖が症状を動かしているなら不安症、と考えられます。ただし重なり合うことも多く、診断は難しいケースも多いです。
適応障害との鑑別も重要です。適応障害の特徴は、
- はっきりしたストレス因(異動・人間関係など)がきっかけ
- その状況から離れると比較的すぐ楽になる
- 原因が明確で、その場面だけつらい → 適応障害
- 原因が不明で、環境を変えても続く → 自律神経失調症・うつ病
不安症、うつ病や適応障害を否定できれば、心身症と確定診断します。
治療
心身症の治療は「身体」と「心」の両方にアプローチします。「身体」に対し内科的治療、「心」に対し抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬などが候補になってきます。ストレスに対し、「環境調整」、あとはいわゆる「ストレスマネジメント」が重要です。
内科的治療
「身体症状」に対し治療を行います。具体的には、
| 症状 | 分類 | 主な薬剤例 | 作用機序 |
|---|---|---|---|
| 自律神経失調症 | 非定型ベンゾジアゼピン系 |
トフィソパム(グランダキシン) | 視床下部の自律神経中枢を調整 |
| 不安・緊張による動悸や胃部不快 | 抗不安薬(軽度) |
エチゾラム、ロラゼパムなど | GABA受容体を介して緊張を緩和 |
| 胃腸症状(腹部膨満・便秘・下痢) | 下消化管運動調整薬 |
トリメブチン(セレキノン) | 消化管の運動を調律 |
| 胃もたれ・悪心 | 上消化管運動調整薬 | メトクロプラミド、イトプリドなど | ドパミン拮抗・アセチルコリン促進 |
| 動悸・息切れに | 循環調整薬 | メインテート | 心拍を落ち着かせる |
| 倦怠感・ほてり・ストレス性不眠・動悸などに。 | 漢方薬 | 加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯など | 自律神経・ホルモンバランス調整 |
心理的アプローチ
・睡眠指導や生活リズムの調整:睡眠リズム、食事・運動、休息の取り方など
・ストレス要因の整理:職場・家などの「外的なストレス」に対し環境調整(休職や休養など)、ストレスをためやすい等「内的(内側)のストレス」に「ストレスの発散」や「疲労の回復」の方法を整理し増やす必要があります。もし考え方・対人面のくせが影響する場合は、その振り返りと調整をします。
・プライベート:⓵心のクセ(まじめ・完璧主義、我慢しがち、人に合わせすぎる、不安を抱え込みやすいなどの性格傾向)、②感情の処理(怒りや悲しみを抑え込む、不安を言語化できない、感情が身体症状として出る(心身症の典型))、③人間関係の負荷(職場のストレス、家族関係の負荷、過去のトラウマ、子どもの頃の環境、過去の経験など)
比較的リスクが高い要因
- 性格傾向: 責任感が強い、完璧主義、感情を抑え込みがち、真面目、人に頼るのが苦手、周囲に気を使いすぎる、自己肯定感が低いといった傾向のある人は、ストレスを溜め込みやすい可能性があります。
- ストレスへの対処法: ストレスを感じたときに、上手く発散したり、人に相談したりすることが苦手な人。
- 過去の経験: 幼少期に大きなストレスやトラウマ体験がある人。
- 遺伝的要因: ストレス反応や自律神経の調節機能に、遺伝的な影響がある可能性も指摘されています。
- 生活環境: 慢性的・過度なストレスにさらされている環境(仕事、家庭など)。
- 健康状態: もともと特定の臓器に弱さがある、あるいは不規則な生活などで体調を崩しやすい人。
受診のタイミング
以下のような場合は受診をおすすめします:
- ・検査で異常がないのに症状が続く
- ・症状がストレスで悪化する
- ・複数の症状が同時に出る
- ・病院を受診しても原因がわからないと言われた
心身症は早期に治療を始めるほど改善しやすい病気です。
医師からのメッセージ
心身症は「気持ちの問題」ではなく、医学的に治療できる病気です。 つらい症状を一人で抱え込まず、まずはご相談ください。 内科として、身体の症状を丁寧に評価しながら、心の負担にも寄り添います。
参考サイト
精神科医の自律神経失調症のブログ




