
糖尿病の治療では、薬物療法や運動療法とともに、食事療法が非常に重要です。「糖尿病になったら、ご飯や甘いものを一切食べてはいけない」と思っていませんか?糖尿病の食事療法は、単に食べる量を減らしたり、糖質を極端に制限したりするものではありません。適切なエネルギー量を守り、栄養バランスのよい食事を規則正しく続けることが基本です。
食生活を改善することで、血糖値の安定、適正体重の維持、脂質異常症や高血圧の改善などが期待できます。
糖尿病の食事療法の目的
糖尿病の食事療法には、主に次の目的があります。
- ✅血糖値やHbA1cを改善する
- ✅食後の急激な血糖上昇を抑える
- ✅適正な体重・体脂肪を維持する
- ✅インスリン抵抗性を改善する
- ✅高血圧や脂質異常症などを改善する
- ✅糖尿病の合併症を予防する
糖尿病の食事療法は、短期間だけ頑張るものではありません。毎日の生活に無理なく取り入れ、長く続けられる食事内容を見つけることが大切です。
糖尿病の食事療法|7つのポイント
1.適切な食事量を守る
食べすぎによるエネルギーの過剰摂取は、肥満やインスリン抵抗性の悪化につながります。必要なエネルギー量は、年齢、性別、身長、体重、身体活動量、病状などによって異なります。肥満がある場合は、無理のない減量を目指すことが血糖改善につながります。一方、高齢者や低栄養の方では、過度な食事制限によって筋肉量が減少することがあるため注意が必要です。
2.主食の量を調整する
ご飯、パン、麺類などの主食には炭水化物が多く含まれています。炭水化物は消化・吸収されてブドウ糖となり、血糖値を上昇させます。ただし、主食を完全に抜く必要はありません。
- ✅ご飯の大盛りやおかわりを控える
- ✅麺類とご飯の重ね食べを避ける
- ✅主食の量を毎食ある程度一定にする
- ✅玄米や雑穀など、食物繊維の多い食品を取り入れる
糖質の量だけでなく、食事全体の栄養バランスを考えることが重要です。
3.野菜・きのこ・海藻類を十分にとる
野菜、きのこ、海藻類には、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどが含まれています。特に食物繊維は、食後の血糖上昇を緩やかにする働きが期待できます。野菜は1日350g程度を目安に、毎食取り入れることをおすすめします。ただし、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃなどは糖質も含むため、食べる量に注意しましょう。
4.たんぱく質をバランスよくとる
たんぱく質は、筋肉や身体の組織を維持するために必要な栄養素です。筋肉量が減少すると、血糖を取り込む能力が低下することがあります。たんぱく質を含む主な食品には、次のようなものがあります。
- ✅魚
- ✅肉
- ✅卵
- ✅豆腐・納豆などの大豆製品
- ✅牛乳・ヨーグルトなどの乳製品
脂身の多い肉や加工肉に偏らず、魚や大豆製品なども取り入れましょう。
なお、糖尿病性腎症などで腎機能が低下している方は、たんぱく質の摂取量を個別に調整する必要があります。
5.脂質の量と質を見直す
脂質のとりすぎは、体重増加や脂質異常症につながる場合があります。特に、脂身の多い肉、バター、揚げ物、菓子類などのとりすぎに注意しましょう。一方、青魚に含まれる脂質や、オリーブ油、なたね油、ナッツ類などに含まれる不飽和脂肪酸は、適量を取り入れることで脂質管理に役立ちます。ただし、植物油やナッツ類もエネルギー量が多いため、食べすぎには注意が必要です。
6.甘い飲み物・お菓子を控える
ジュース、加糖コーヒー、清涼飲料水、菓子類などには、多くの糖質が含まれている場合があります。特に糖分を含む飲料は短時間で摂取しやすく、血糖値が急激に上昇する原因になります。日常の水分補給には、水や無糖のお茶などを選びましょう。お菓子を食べる場合は、量と頻度を決めて楽しむことが大切です。
7.規則正しく食べる
食事を抜いたり、夜遅い時間に大量に食べたりすると、血糖管理が難しくなる場合があります。
- ✅朝食・昼食・夕食を規則正しくとる
- ✅まとめ食いや過食を避ける
- ✅夜遅い時間の大量の食事を控える
- ✅よく噛み、ゆっくり食べる
- ✅間食の量や時間を見直す
特にインスリンや一部の血糖降下薬を使用している方は、欠食による低血糖にも注意が必要です。
食事の基本バランス
毎日の食事では、主食・主菜・副菜を組み合わせることが大切です。
| 食事の構成 | 主な食品 | 役割 |
|---|---|---|
| 主食 | ご飯、パン、麺類 | 主なエネルギー源 |
| 主菜 | 魚、肉、卵、大豆製品 | たんぱく質の補給 |
| 副菜 | 野菜、きのこ、海藻類 | 食物繊維、ビタミン、ミネラルの補給 |
お皿の半分程度を非でんぷん性の野菜、残りを主食と主菜に分ける「プレート法」も、食事バランスを考える一つの方法です。ただし、実際の食事量や栄養素の配分は、患者さんの病状や必要エネルギー量によって調整します。
糖尿病の方におすすめの1日の食事例
- ✅朝食 ご飯(適量)+卵料理または焼き魚+野菜のおかず+味噌汁
- ✅昼食 ご飯(適量)+鶏肉または魚料理+サラダ+野菜の副菜
- ✅夕食 ご飯(適量)+魚料理または豆腐料理+温野菜+きのこ・海藻類のおかず
※食事量は一例です。必要エネルギー量や治療内容に合わせて調整します。
控えたい食品・積極的に取り入れたい食品
| 控えたい食品・食べ方 | 取り入れたい食品・食べ方 |
|---|---|
| ジュース・加糖飲料 | 水・無糖のお茶 |
| 菓子パン・甘いお菓子の食べすぎ | 適量の果物や無糖ヨーグルト |
| 揚げ物・脂身の多い肉の食べすぎ | 魚・大豆製品・脂身の少ない肉 |
| 白米や麺類の大盛り | 適量の主食、玄米・雑穀など |
| 野菜が少ない食事 | 野菜・きのこ・海藻類を組み合わせた食事 |
| 夜遅い時間の大量の食事 | 規則正しく、適量を食べる習慣 |
食品を完全に禁止するのではなく、摂取量、頻度、調理方法を工夫することが大切です。
食事療法で注意が必要な方
次のような方は、一般的な食事療法だけではなく、個別の栄養管理が必要です。
■腎機能が低下している方
腎機能や栄養状態に応じて、たんぱく質、塩分、カリウムなどの調整が必要になる場合があります。
■高齢者・やせている方
過度なエネルギー制限は、低栄養や筋肉量の減少につながることがあります。
■インスリン・SU薬などを使用している方
食事量が少ない場合や食事を抜いた場合に、低血糖が起こる可能性があります。
■肥満を伴う2型糖尿病の方
適切なエネルギー制限と運動療法を組み合わせ、無理のない体重管理を行います。
食事療法と運動療法を組み合わせましょう
糖尿病の治療では、食事療法と運動療法を組み合わせることで、血糖管理や体重管理の改善が期待できます。
ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、筋力トレーニングを取り入れることも効果的です。
食後に軽く歩くことや、長時間座り続けないようにすることも、日常生活で取り入れやすい工夫です。
湊川ファミリークリニックでの糖尿病診療
当院では、糖尿病の診断・治療に加え、食生活や運動習慣の見直しを含めた生活習慣病の管理を行っています。
血糖値やHbA1cだけでなく、体重、血圧、脂質、腎機能なども確認し、患者さんの状態に合わせた治療方針をご提案します。
また、必要に応じて体組成測定(InBody)などを活用し、体重だけでは分かりにくい筋肉量や体脂肪量の変化も確認できます。
糖尿病の食事療法で最も大切なのは、食べないことではなく、適切な量とバランスのよい食事を継続することです。
健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された方、糖尿病の食事管理でお困りの方は、湊川ファミリークリニックへご相談ください。




